【建設業界ニュース】民間工事の代金支払い、引き渡し後にズレ込み?約4割が後払いという実態

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引き渡し後の支払いが多い?建設業界での意外な実態

建設業界の最近のニュースとして注目されているのが、民間工事の代金支払いのタイミングに関する調査結果です。
日本建設業連合会(日建連)が行った最新の調査によると、民間発注の工事において、請負金額の約4割が工事完了後、つまり「引き渡し後」に支払われていることがわかりました。

しかも、中には引き渡しから5カ月以上経ってようやく代金が支払われるケースもあるなど、支払いの遅れが顕著な事例も確認されています。
こうした遅延は、元請会社だけでなく、下請会社や関係業者にも影響し、建設業界全体の資金繰りや経営に悪影響を及ぼすリスクがあります。

国土交通省も巻き込み、改善に向けた動き

この調査を受けて、日建連では国土交通省に実態を報告し、民間発注者に対して支払い条件の改善を働きかけていく方針です。
支払いタイミングが不明確または遅延することで、建設現場では資金ショートが起きたり、支払遅延により協力会社との関係にひびが入ることも少なくありません。

支払いの実態:契約から引き渡し後までの流れ

調査は、2023年11月から2024年10月の間に完成した民間工事を対象に、日建連の会員企業74社からの回答を基にまとめられました。
対象となったのは、請負金額が50億円以上の大型工事、または該当しない場合はその企業が担当した金額の大きい上位5件の工事です。

各工事の支払いタイミングを単純平均で見ると、

  • 契約時点での支払い:8.6%
  • 引き渡し後60日以内:27.8%
  • 引き渡し後60日以降:11.2%

という結果になり、合計で39.0%が「引き渡し後」に支払われていたことになります。

特に支払いが遅れがちな業種も

この調査では、業種によって支払い傾向に違いがあることも明らかになりました。
たとえば、

  • 不動産業界では、請負金額の約半分を引き渡し後に支払う傾向があり、
  • 電気機械工業では、約3割以上が引き渡し後60日を超えて支払われるという状況でした。

実際にあった「支払いが極端に遅い」ケースとは?

支払い条件が特に厳しい事例としては、以下のようなケースも報告されています:

  • 契約時・工事中に一切支払いがなく全額が引き渡し後150日以上たってから支払われた
  • 契約時に10%、引き渡し後60日を超えてから残りの90%を支払うケース
  • 契約時10%、中間時10%、残り80%が引き渡し後60日以降というように、工事完了後に大半の金額を支払う契約も存在します

こうした契約条件は、中小の建設業者にとっては大きな負担となり、工事を請けるかどうかの判断にも影響を与えることがあります。

建設業界の未来のために求められる「支払いの適正化」

建設業界では今、人手不足や資材高騰といった課題が山積しており、資金繰りの安定は企業の生死を分ける重要な要素です。
今回の調査で明らかになった「引き渡し後支払いの実態」は、業界全体が抱える構造的な課題のひとつとも言えるでしょう。

今後、民間発注者が支払い条件の改善に向けて意識を高め、適正で早期の支払いが定着することが、健全な建設業界の維持に必要不可欠です。

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