シンガポールで進行中の大型トンネル工事に日本の技術が活躍-五洋建設が挑む都市部地下高速道路整備の最前線

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市街地の真下に建設される全長1キロの地下高速道路

近年の建設業界では、海外プロジェクトへの進出がますます注目を集めています。中でも五洋建設が手掛けるシンガポールの大型トンネル工事「N105工区」は、その象徴とも言える事業です。

この工事は、シンガポールの南北をつなぐ全長約21.5kmの新しい高速道路「ノースサウス・コリドー(NSC)」の一部。五洋建設が担当するのは、市街地地下に整備される約1キロの地下区間で、施工現場は病院や学校、ショッピングセンターなどが密集する繁華街に位置しています。地上部の交通量が非常に多いだけでなく、地下にはすでに都市高速鉄道(MRT)が通っており、高速道路と交差するポイントも存在するなど、極めて難度の高いプロジェクトとなっています。

日本の特許技術「函体推進工法」で難所を突破

この工事の最大の難所は、既存のMRTを“上下から挟み込む”形で高速道路を建設する点です。高速道路とMRTの距離は、わずか1.5メートル。従来の工法では地盤の崩壊リスクや既存インフラへの影響が大きく、安全確保が難しいとされていました。

そこで五洋建設が提案したのが、日本独自の特許技術である「函体推進工法(SFT工法)」です。この工法は、トンネルを“ところてん”のように押し出すことで地中に設置する技術。地面を掘り返す「開削工法」とは異なり、地上を掘ることなく、既存施設に影響を与えずに構造物を地中に築造することができます。具体的には、矩形の箱状構造(ボックスカルバート)を水平に押し出すことで地盤ごと置き換え、トンネルを形成していきます。

この工法の採用により、安全性と作業効率の両立が可能になりました。設計や施工計画の評価が重視される技術選定型入札において、五洋建設はこの高度な提案力を武器に、競合他社を抑えて受注を勝ち取りました。契約金額は約642億円(受注当時)、工事は2018年8月に始まり、現在は全体の50%ほどが完了しています(2024年10月時点)。

海外で輝く日本人技術者たち

この現場では、五洋建設の若手技術者も活躍しています。国際部門を希望して配属された田島涼主任は、今回が初めての現場勤務。シンガポールでの勤務は5年目となり、「安全第一で、現場のリスクを自分の目で見て判断しながら、責任を持って工事を進めたい」と語ります。

また、現場を統括する荒木俊雄所長は「既存の地下鉄の上と下に新たな高速道路を通すという前例の少ない工事。日本の技術力の高さを世界に証明したい」と、意気込みを見せています。

建設業界が注目する国際プロジェクトの今後

日本の建設技術は、国内だけでなく海外でも高く評価されています。今回のような都市部地下での難工事においても、五洋建設はこれまで培ったノウハウと独自の技術を駆使し、現地の信頼を勝ち取っています。

今後も海外での建設プロジェクトが増加する中、日本企業の高度な技術や人材が世界各国のインフラ整備に貢献していくことでしょう。今回のシンガポールでの取り組みは、その大きな一歩と言えそうです。

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