UBE三菱セメントの新社長、平野和人氏は、企業の成長と社会貢献を両立させるために、次のステージへと踏み出す決意を語っています。今後の戦略として、国内事業の強化と海外事業のさらなる拡大、そしてカーボンニュートラル(CN)への対応が重要な柱となります。
安定した業績と新たな挑戦
UBE三菱セメントは、現行の中期経営戦略で掲げた営業利益の目標を前倒しで達成しました。平野氏は、「今後のビジネスモデルの再構築を進めることが重要だ」と語り、特に国内事業の安定化と海外事業の急成長を目指すとしています。また、次期戦略の中では、2025年度までに営業利益750億円の達成を目標に掲げており、バイオマス関連事業などの新たな取り組みも進行中です。
セメント事業の将来展望と課題
国内市場におけるセメント需要は減少していますが、平野氏は「需要はいつか回復する」と予測しています。今後は、1トンあたりの価格を2000円引き上げる方針で、コストダウンをさらに徹底する考えです。生産体制の見直しも完了し、燃料コストの削減や効率化に向けた取り組みが進められています。
海外市場では、米国・南カリフォルニアで展開する「垂直統合モデル」が注目されています。石灰石の採掘からセメントの生産・出荷、生コン工場の運営まで一貫した体制を確立し、今後は北米やオセアニア地域を中心に新たな事業拠点を開拓する予定です。
カーボンニュートラル(CN)への対応
カーボンニュートラル(CN)対応は、今後の最も重要な課題の一つです。UBE三菱セメントは、セメント製造過程でのアンモニア混焼技術の実証を行い、世界で最も進んだ技術を誇ります。この技術を基に、今後は持続可能なビジネスモデルを構築していく予定です。さらに、他業種との協業も視野に入れ、産業廃棄物処理などの社会貢献にも積極的に取り組んでいます。
物流改革と産廃処理の強化
物流改革の一環として、UBE三菱セメントは営業部門内の物流担当部署を独立させ、専任の物流部を設立しました。ドライバー不足への対応や運送会社との密接な協力を深めることで、より効率的な物流体制の構築を進めています。
また、産業廃棄物処理では、関西に新しい廃プラスチック集積施設を整備。セメント製造の過程で廃棄物を再利用する設備を強化し、環境負荷の軽減を目指しています。
新社長の背景と展望
平野和人氏は1985年に上智大学法学部を卒業後、三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)に入社。2022年にはUBE三菱セメントの副社長に就任し、2025年4月に社長に就任しました。平野氏は、「100年以上にわたるセメント製造の歴史と、UBEおよび三菱マテリアルのDNAを受け継ぎ、さらに会社を発展させていく」と強調しています。