山梨県は、2025年に向けた新しい交通システム「富士トラム構想」の実現に向けて、組織改正を行い、専任の担当課「山梨・富士未来課」を新設しました。この構想では、富士山の麓から5合目まで、ゴムタイヤで運行する新しい交通手段の導入を目指しています。注目すべきポイントは、既存の公道を利用することで、鉄道に比べてコストを大幅に削減できることです。
富士山と周辺エリアを結ぶ新交通ネットワーク
新しい交通システム「富士トラム」の最大の特徴は、鉄道ではなくゴムタイヤを使用する点です。これにより、既存の道路をそのまま利用できるため、大規模な工事が不要になります。将来的には、この「富士トラム」を利用して、富士山と山梨県内各地を結ぶネットワークを構築する計画もあります。例えば、リニア中央新幹線の山梨県駅(甲府市)や、中央線甲府駅と結ぶことを視野に入れています。
タイヤ式トラムのメリット
新システムの導入には数々の利点があります。鉄道ではなくタイヤ式に転換することで、約1400億円かかるとされていた従来の鉄道建設費用を大幅に削減できます。さらに、タイヤ式トラムは一般道路を走行できるため、富士山から他の観光地や県内各地への延伸が容易に実現できるのです。
また、このトラムは白線や磁気マーカーを使って誘導されるため、大掛かりなインフラの変更は必要なく、メンテナンスも軽微です。さらに、来訪者数のコントロールや、環境負荷の軽減にも効果があります。これは観光地としての富士山の維持や、交通渋滞の緩和に繋がります。
環境に配慮した未来型交通
新しい「富士トラム」は、環境に優しい燃料を使用する予定です。動力源としては、次世代のクリーンエネルギーである水素燃料電池や、バッテリー技術を活用する計画です。さらに、県内の水素エネルギー技術を活用する方針で、地元産業の活性化にも貢献します。
想定される車両の仕様は、1編成が約30メートル、幅2.6メートル、高さ3.6メートル。輸送力は、1編成あたり約120人を運ぶことができます。このトラムは、リニア中央新幹線開業と同時に富士山と周辺地域を繋げる重要な役割を果たすと考えられています。
今後のスケジュールと展望
現在、富士トラムの導入に向けた具体的なスケジュールはまだ決まっていませんが、山梨県は「スピード感を持って検討していく」としています。また、長崎幸太郎知事は、リニア中央新幹線と合わせて、早期に実現することの重要性を強調しています。
この新しい交通システムが実現すれば、富士山の観光だけでなく、地域経済の活性化にも寄与することが期待されます。今後、詳しい計画や具体的な動きについても、注目が集まります。