【建設ニュース・最近の話題】AI導入は進むも効果は限定的?建設業界の最新DX事情とは

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近年、建設業界では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の波が押し寄せています。中でも注目を集めているのが、AI(人工知能)を活用した業務改善です。

こうした中、建設業界向けにDX支援を行うArent(アレント)が、ゼネコンなどを対象にAI導入の実態を調査。その結果から、現場のリアルな課題と、今後の可能性が見えてきました。

AIは導入されているが、効果の実感はまだこれから?

調査は2024年7月から12月にかけて、Arentが登壇したセミナーや展示会の参加者にアンケート形式で実施され、299件の有効回答が集まりました。

この調査で分かったのは、すでにAIを導入している建設企業が少なくないという事実です。しかし、導入していてもその効果を十分に感じている企業は少数派にとどまっています。

具体的には、次のような結果となりました。

  • 7.9%の企業が「効果を実感している」
  • 4.5%が「広範囲で使っているが効果は不明」
  • 32.3%は「特定業務で使っている」
  • 45.5%は「導入を検討中」

つまり、半数近くの企業が「これからどう使うか」を模索している段階だと言えます。これは、「AIってなんだかすごそうだけど、実際にはどう使えば良いのか分からない」という現場の戸惑いを反映しているとも言えるでしょう。

AIに期待するのは「業務の効率化」

企業がAI導入に期待している効果についての質問では、「業務効率化」が最も多く、全体の44.4%を占めました。

続いて多かったのが「データ分析の高度化(28.9%)」で、その他にも「顧客対応の改善(8.6%)」「新しいビジネスの創出(8.2%)」などの回答がありました。

たとえば、ある建設会社では、過去の見積データをAIで分析し、より精度の高い予算計画を立てる取り組みが始まっています。こうした使い方が定着すれば、業務の質も効率も大きく向上することが期待されています。

しかし「導入しても効果が分からない」という声も多い

調査では、「AIを導入したものの、期待したほどの効果を感じていない」と答えた企業も少なくありませんでした。

  • 「期待以上の効果が出ている」…わずか2.6%
  • 「期待通りの効果が出ている」…25.4%
  • 「あまり効果を感じない」「全く感じない」…約30%
  • 「効果を測定できていない」…42%

特に「効果を測定できていない」という回答が多かった点は注目に値します。AIの導入そのものが目的化してしまい、効果検証の仕組みが整っていないことが浮き彫りになっています。

AI導入の障壁は「人材不足」と「ノウハウの欠如」

また、AI導入における課題として、以下のような意見が多く寄せられました。

  • AIに詳しい人材がいない(16.6%)
  • AIをどう使えばいいか分からない(ノウハウがない:19.8%)
  • 技術的な壁がある(15.7%)
  • データの質や量が不十分(12.7%)
  • セキュリティ上の懸念がある(13.3%)

たとえば、図面データや施工記録などはまだ紙で管理されているケースも多く、AIに活用できるだけのデジタルデータが整っていないという現場も少なくありません。

今後求められるのは「戦略的なAI活用」

調査を実施したArentは、今後の建設業界においては、業務効率化だけにとどまらず、AIを活用したデータ分析や新規事業の創出など「戦略的な活用」がカギになるとしています。

建設業は長らく人手に頼ってきた業界ですが、人材不足や高齢化といった問題が深刻化する今、AIという新しい力をどう取り入れるかが、企業の成長を左右する大きなポイントとなってきそうです。

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