2025年4月14日、資源エネルギー庁は、地熱発電の次なるステージを目指すための「次世代型地熱推進官民協議会」の初会合を東京都内で開催しました。地熱発電は、地中深くに存在する高温の熱水をエネルギー源として活用する発電方法で、再生可能エネルギーの中でも特に純国産エネルギーとして注目を集めています。
今回の協議会では、これまで以上に発電効率の高い「超臨界地熱」の技術開発や、現場への導入(社会実装)を目指し、2030年代の早い段階で実用化するための具体的な研究開発計画や目標を盛り込んだロードマップを、2025年10月を目処に策定する方針です。
官民が連携した開発体制
この協議会には、エネルギー関連企業やメーカー、金融機関、政府機関に加え、大手・準大手の建設会社(ゼネコン)も参加しており、業界横断的な取り組みとなっています。建設分野からは、以下の5社がメンバーに名を連ねています。
- 大林組
- 鹿島建設
- 熊谷組
- 大成建設
- 西松建設
これらの企業は、ダムやトンネル、発電所などの大規模インフラ建設で培った高度な土木技術をもとに、地熱発電所の建設や掘削技術の実証にも貢献していくことが期待されています。
技術面での具体的なアプローチ
従来の地熱発電は、自然に存在する「地熱貯留層」から熱水や蒸気を取り出して発電する方式が主流でしたが、次世代型ではこれに加え、以下のような技術開発が進められています:
- 地下の岩石を人工的に割って「貯留層」を作る技術(EGS:Enhanced Geothermal System)
- 地熱層に人工的に流体を循環させて熱を回収する技術
- マグマに近い高温領域(超臨界)から熱水を利用する発電技術
これらの技術は、より広い地域で地熱発電を可能にし、発電効率の向上にもつながります。
また、開発が難しいとされる自然公園や温泉地周辺などのエリアでも、自然環境に配慮しながら慎重に開発を進める体制づくりが進められています。
地熱発電の今と将来
現在(2022年度時点)の日本の地熱発電は、国内総発電量のわずか0.3%にとどまっています。しかし、政府の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度までにその割合を約4倍の1~2%程度まで引き上げる方針が掲げられています。
地熱発電は、太陽光や風力に比べて天候の影響を受けにくく、安定した出力が見込める点も評価されています。加えて、燃料の輸入に頼らずに国内資源でまかなえる「エネルギー安全保障」の観点でも極めて重要なエネルギー源です。
官民の連携に期待
協議会の座長には、九州大学大学院の藤光康宏教授が就任し、専門的な知見のもとでの方向性の議論が進められています。初会合では、竹内真二・経済産業大臣政務官が登壇し、以下のようにコメントしました:
「地熱は、日本にとって貴重な純国産の脱炭素エネルギー。世界でも社会実装が進んでおり、日本の技術力を生かして市場をリードしていくべきです。」
今後、建設業界やエネルギー関連産業が連携し、日本の地熱発電の未来を切り拓いていく動きに注目が集まりそうです。