残コン・戻りコン問題の現状
東京地区では、生コン業者が残コン(残ったコンクリート)や戻りコン(工事現場に納品できずに戻ったコンクリート)の処理に苦しんでいます。残コンや戻りコンの処理は、コストがかかり、環境にも負担をかけるため、業界全体での解決策が求められています。
東京地区生コンクリート協同組合(森秀樹理事長)によると、過去10年間、残コン・戻りコンの発生率は年間出荷量の約3%~3.5%で推移しています。この数字は、一部の業者にとっては大きな問題となっており、発生量を減らすためにいくつかの方策が講じられています。
取り消し料金の引き上げ
2014年度から、東京地区では戻りコンを有償化し、さらに2023年度からは残コンについても有償化を進めました。しかし、残念ながら発生量は依然として高く、2025年度には取り消し料金が3倍以上に引き上げられることが決定しました。これにより、発注者(建設会社)がコスト削減に向けて行動することを期待しています。
取り消し料金の引き上げは、業界全体で残コン・戻りコンの発生を抑制するための重要な施策ですが、現場での状況によっては、今後、建設会社が直接、処理を依頼する可能性も出てきています。
現場での問題と対策
東京の工事現場では、規模が大きいためヤード(保管スペース)が確保しにくく、ミキサー車の待機場所も限られています。このため、規定の90分以内にコンクリートを現場に届けられず、戻りコンが発生してしまうケースが多いのです。また、特殊なコンクリート(軽量や高強度コンクリートなど)の発注が増えることで、残コン・戻りコンが増加する傾向にあります。
特にゼネコン(大手建設会社)が使用する低炭素コンクリートは、管理が難しく、夏場のスランプ(コンクリートの流動性)保持は60分が限界とされています。このような管理が難しいコンクリートが増える中、残コン・戻りコン問題がさらに深刻化しています。
産業廃棄物処理施設の限界
東京地区では、残コン・戻りコンの処理を行う産業廃棄物処理施設の能力が限界に達しつつあります。処理業者は、生コン業者に対して処理量を前年度の8割程度に制限するように求める事例も出ています。これにより、処理費用が上昇し、生コン各社の経営に圧力がかかっています。
グリーン骨材(回収骨材)の活用
残コン・戻りコンの削減には、グリーン骨材(回収骨材)の活用が鍵となります。回収骨材は、2014年にJIS(日本工業規格)の改正により使用が可能となりましたが、実際には十分な活用が進んでいないのが現状です。
グリーン骨材は、自社で仕入れた骨材を再利用しているため、品質が確保されており、他の再生骨材と比べて安定性が高いとされています。しかし、解体現場から発生するコンクリート殻を原料とする再生骨材には、産地が不明な場合があり、品質に不安が残ります。そのため、再生骨材の使用には慎重な姿勢が求められています。
今後の取り組みと期待
東京地区の生コン業者は、2025年度を残コン・戻りコン削減の最終期限と位置付けています。今後、発注者である建設会社が処理を担当するなど、新たな対策が検討される予定です。関係者は、東京都に新しい埋め立て地の開発をデベロッパーやゼネコンから働きかけることが、問題解決の一つのカギになると指摘しています。
残コン・戻りコンの削減には、業界全体の協力が不可欠です。発注者(建設会社)も共通の危機感を持ち、発生量を抑えるための取り組みを進めることが求められています。