2025年、シンガポールは独立から60年という節目を迎えます。このアジアの小さな国は、今や世界でも有数の金融・商業・観光の拠点として発展を遂げました。その成長の陰には、確かな技術でインフラ整備を支えてきた建設会社の存在があります。
中でも注目されているのが、日本の五洋建設。1964年、シンガポール独立の前年に進出して以来、半世紀以上にわたり現地で数多くのプロジェクトを手がけてきました。特に埋め立てによる国土拡張工事においては、同国の埋め立て地の約4割を五洋建設が施工してきた実績があります。
1960年代の進出から、海・陸・建築の3分野で活躍
五洋建設のシンガポール進出の第一歩は、1964年に受注した「ジュロン造船所」の建設工事でした。当時、国の経済発展の要となる造船業の拠点整備という重要なプロジェクトを任されたことは、現地からの期待の大きさを物語っています。
その後1970年代からは、五洋建設が得意とする埋め立て工事を中心に、シンガポールの国土拡大に大きく貢献。代表的な事例としては、「ジュロンアイランド」や「チュアス地区」での埋め立て工事があり、これらの地域は現在、コンテナターミナルや石油化学プラントの立地エリアとして国の産業を支えています。
1990年代後半からは、都市高速鉄道(MRT)や高速道路などの陸上インフラ工事にも進出し、さらに2000年代以降は大型病院や官公庁施設といった建築工事でも活躍しています。
ランドマーク建設の実績も豊富
五洋建設は、インフラだけでなく文化的なランドマーク施設の建設にも携わっています。
中でも象徴的なのが「エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ」。ドリアンを思わせる特徴的なデザインのこの劇場は、シンガポールを代表するアート施設として知られ、新5セント硬貨のデザインにも採用されるほどの存在感を放っています。
また、入国管理局が入る「ICAビル」、複数の大型総合病院の建設プロジェクトなども五洋建設が手がけた案件です。
公共機関との厚い信頼関係
五洋建設が受注してきた工事の多くは、シンガポール政府の主要機関から発注されたものです。たとえば:
- 港湾整備を行う海事港湾庁(MPA)
- 公共住宅を管理する住宅開発庁(HDB)
- 都市交通を担当する運輸局(LTA)
- 水道・下水道を管轄する公益事業庁(PUB)
- 医療施設の整備を担う保健省(MOH) など。
これらのプロジェクトは、品質・安全・スケジュールのどれを取っても高い信頼性が求められる案件ばかり。五洋建設が長年にわたり任され続けている背景には、そうした期待に応える実力と経験があります。
際拠点としてのシンガポール本社
2015年には、五洋建設の国際事業部門の本社機能をシンガポールに移転。同国をアジア全体の事業拠点と位置づけ、さらなるグローバル展開を進めています。
五洋建設の清水琢三社長は、「シンガポールには豊富な実績と人材がそろっており、技術的に難易度の高い工事も、安全を最優先にしながら高品質で完成させることができる。当社の実力が評価される理由はそこにある」と語っています。
シンガポールでの国土の4割を築いた五洋建設の60年にわたる軌跡とは?埋め立て・建築・交通インフラにおける実績やランドマーク建設の具体例を交え、最新の動向まで分かりやすく解説。今後の展望:インフラで支える成長のパートナー
シンガポールは今後も、都市の高度化・スマート化を背景に、インフラ整備の需要が続く見通しです。五洋建設はこれからも、60年にわたる信頼と実績をベースに、同国の未来づくりに貢献していく方針です。
建設業界における日本企業の海外展開の成功事例として、五洋建設のシンガポールでの活動は、今後も注目すべき動きと言えるでしょう。