東急建設と建材メーカーのJSP(東京都千代田区)、クギン(名古屋市中区)は、**RC造(鉄筋コンクリート造)建築物におけるコンクリート打設時の作業を効率化できる「新型の耐震スリット材」**を共同開発しました。
この新技術は、東京都渋谷区で進行中の「(仮称)宇田川町42計画新築工事」に初めて採用され、施工の効率化や品質向上に効果があることを実証。今後の広がりが期待されている注目の技術です。
耐震スリット材とは?何のために使われるの?
耐震スリット材とは、地震の揺れによって柱や壁が損傷するのを防ぐために用いられる部材です。建物の構造体にスリット(すき間)を設けることで、揺れが直接伝わりにくくなり、建物の安全性を高める役割を果たします。
しかし、これまでの施工方法では、コンクリートを柱と壁に**交互に少しずつ打設する「打ち分け作業」**が必要で、現場での作業管理に手間がかかっていました。一般的には、1〜1.5ミリの高さで細かく交互に打設する必要があり、熟練の職人でもミスが出やすい工程です。
新型スリット材の特徴は?なぜ「打ち分け」が不要に?
今回開発された耐震スリット材は、これまでのスリット材に加えて、
- 補強材「トラストデッキ」
- 中間支持材
という新しい構造を組み込むことで、コンクリート打設時にかかる横方向の圧力(側圧)に強くなっています。これにより、スリット材が変形しにくくなり、一気にコンクリートを打ち込んでも問題ない構造になりました。
つまり、これまでのように時間をかけて打ち分ける必要がなく、柱も壁も1回でまとめて打設できるようになったのです。
新技術のメリットとは?実際にどう変わる?
この新型スリット材を使うことで、施工現場では以下のようなメリットが生まれます。
- 打ち重ね不良のリスクが減少
→ コンクリートの継ぎ目部分にムラが出にくくなります。 - 表面の色むらを抑制
→ 完成後の見た目も美しく仕上がります。 - 打設作業のスピードアップ
→ 工期短縮や作業負担の軽減にもつながります。
たとえば、一般的なマンションやオフィスビルのように階高が決まっている建物では、1階の柱と壁を一気に仕上げることが可能になり、品質のばらつきも抑えることができます。
今後の展望は?業界全体の効率化にも期待
東急建設は、今回のプロジェクトで得た実績をもとに、今後も新型耐震スリット材の適用範囲を広げていく方針です。特に都市部の大型再開発や高層ビル建設など、作業効率と品質管理が重視される現場での導入が期待されています。
建設現場における人手不足や熟練技能者の高齢化が課題となる中、このような省力化技術や施工性の高い建材の開発は、業界にとって重要な一歩といえるでしょう。