2025年4月9日、アメリカのトランプ政権が日本製品に対して24%の相互関税を導入すると発表しました。この突然の発表は、建設業界にも大きな波紋を広げています。特に影響が懸念されているのが、アメリカへの輸出比率が高い建設機械メーカーです。
コマツなど建設機械メーカーに直撃か
建設機械業界では、すでに動きが出ています。たとえば、建設機械大手のコマツは、アメリカ向けの機械を石川県内の工場で製造しています。地元の行政も状況を注視しており、石川県の産業政策課は「現段階では情報収集中。対応策は今後検討する」とコメントしています。
また、日本建設機械工業会は「影響は避けられない」として、業界全体の実態調査を始めました。日本からの建機輸出が減少すれば、生産や雇用に影響が出る可能性もあり、地域経済にも波及することが懸念されています。
元請企業やゼネコンはどう見るか
一方で、国内建設市場に対しては「すぐには大きな影響はない」と見る声もあります。ある大手ゼネコンは、「米国での事業には影響があるかもしれないが、現地で資材を調達する体制が整っているため、コストへの直接的な影響は限定的」と冷静に分析しています。
しかし別の元請団体は、「メキシコで製造して米国に輸出する日系企業の投資意欲が下がる可能性があり、その影響で受注が減少するリスクもある」と警鐘を鳴らします。さらには「長期的には鉄鋼などの建設資材の価格上昇が、建設コスト全体に波及し、発注者の投資判断にも影響を及ぼしかねない」と懸念する声も上がっています。
賃上げの流れにもブレーキの可能性
建設業界では人手不足対策として賃上げを進めてきましたが、今回の関税措置がコスト増につながれば、こうした流れにも悪影響が出る可能性があります。建設業界が長年取り組んできた人材確保策に水を差す事態も想定されており、業界全体が慎重な姿勢を見せています。
政府の対応にも注目
政府もこの事態を「国難」と位置づけ、関税措置の内容を精査しつつ、国内企業や生活者への影響を分析しています。中野洋昌国土交通大臣は、4月4日の閣議後会見で「国際物流をはじめ、建設や交通インフラ分野への影響も含めて検討を進める」と述べており、経済対策の策定にも着手する構えです。
今後の注目ポイント
今後注目すべき点は、以下の3つです。
- 建設機械の輸出動向と国内生産への影響
- 米国市場における日本の建設関連企業の受注状況
- 資材価格や建設コストの動向と、それが発注者の投資判断に与える影響
建設業界にとって、国際情勢の変化は無関係ではいられません。特にアメリカとの経済関係が密接な今、相互関税がもたらす影響は多方面にわたる可能性があります。企業だけでなく、行政や発注者、そして働く人々にとっても、今後の動向に注目が集まっています。