近年、環境負荷を減らし、持続可能な社会を実現するための新しい建設技術が注目されています。その中でも、鹿島グループをはじめとする4者が開発した「フライアッシュCSG」は、建設業界に革新をもたらす技術として注目されています。
「フライアッシュCSG」は、ダム建設などでよく使われる材料である「CSG(締固め安定処理土)」に、従来のセメントの一部を代替する形で、JIS規格外のフライアッシュ(石炭灰)を加える新しい材料です。この技術により、通常のCSGと同等の強度を保ちながら、環境に優しい効果を発揮します。
フライアッシュCSGの特長
この新しい材料が特に注目される理由は、環境への配慮にあります。フライアッシュは、石炭を燃やす過程で発生する副産物で、通常は産業廃棄物として処理されます。しかし、このフライアッシュを有効活用することで、廃棄物を減らし、CO2排出量の削減にもつながります。具体的には、フライアッシュCSGを使用することで、従来のCSGに比べて約28%のCO2排出量を削減することができるのです。
また、フライアッシュCSGの使用によって、ダムの堤体における密実性が向上し、経年劣化が少なくなるというメリットもあります。これにより、堤体の耐久性が向上し、長期的に安定した性能を発揮することが期待されています。
成瀬ダムでの実証試験
フライアッシュCSGは、秋田県東成瀬村にある成瀬ダムの堤体工事で実際に使用されました。ここでは、計7,250立方メートルのフライアッシュCSGがダム堤体の一部に導入され、国内で初めての大規模な実証が行われました。この実証試験により、フライアッシュCSGは従来のCSGと同等以上の品質を保ちつつ、環境負荷を低減できることが確認されました。
今後の展望と展開
鹿島グループをはじめとする4者は、今回の成果をもとに、フライアッシュCSGの技術をさらに進化させ、ダムだけでなく、さまざまな構造物にも展開していく予定です。将来的には、JIS規格外のフライアッシュを使用したコンクリートを開発し、ゼロエミッションや持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させることを目指しています。
建設業界は今後、環境に配慮した技術革新が求められる時代を迎えます。フライアッシュCSGは、その一歩として、業界全体の環境負荷を軽減し、持続可能な社会に貢献できる技術となることでしょう。