群馬県建設業協会(会長:青柳剛氏)は、2024年2月19日に「時間外労働のあり方」と「賃上げ」に関するアンケート結果を公表しました。この調査では、建設業界が直面する課題や、今後の改善策についての意見が集まりました。
調査結果によると、9割以上の企業が人材不足を課題として認識。特に建設業特有の働き方として、「天候に左右される屋外作業」「一品受注生産」「現場ごとに異なる作業環境」が挙げられ、一般的な業種と異なる特性が浮き彫りになりました。
人材不足が深刻な建設業界
調査対象となった群馬県建設業協会の会員企業274社のうち、回答したのは237社(回答率86.5%)。そのうち、92.8%(220社)が「人材確保が最大の課題」と回答しました。
また、技術者・技能者の時間外労働が減らせない理由として、75.1%(178社)が「工事書類や図面作成などの内業の負担が大きい」ことを指摘。次いで「工期が厳しい」「気象状況の影響が大きい」などの問題点が挙げられました。
例えば、夏場は猛暑で作業が困難になり、冬場は降雪や凍結で工事が中断されることも珍しくありません。さらに、建設現場は都市部だけでなく山間部や遠隔地にも点在し、移動時間の長さも労働時間の増加に影響を与えています。
時間外労働の上限規制に対する意見
建設業では2024年4月から「時間外労働の上限規制」が適用され、「年720時間」「月45時間超の残業は6カ月まで」という厳格なルールが導入されます。しかし、多くの企業が「建設業の特性を考慮した規制緩和が必要」と回答しました。
実際に、35%(83社)の企業が「月45時間超の上限規制を6カ月以内とするルールの緩和が必要」と回答。また、26.2%(62社)が「複数月の平均80時間以内」や「1カ月100時間未満」の緩和を求めました。一方で、24.5%(58社)は「規制緩和は不要」との立場を示しました。
公共工事の週休2日制への対応
週休2日制については、最も多くの企業(101社)が「工期内で4週8休の形をとる」と回答し、次いで80社が「月単位での4週8休」を選択しました。一方、「完全な土日休み」を希望する企業は少なく、建設業の「一品受注生産」「現場ごとの特性」などを考慮すると、週単位の固定休は現実的ではないことが分かります。
賃上げの現状と課題
「賃上げ」に関する調査では、回答した237社のうち56.1%(133社)が「2025年度に従業員の月額基本給を引き上げる」と回答。賃上げ率として最も多かったのは「1.5~2%未満」(25.6%、34社)、次いで「2~3%未満」(24.1%、32社)でした。
具体的な賃上げ額では、「5000円~1万円未満」が最も多く、48.1%(64社)が選択。次いで「1万円~2万円」が32.3%(43社)となりました。
賃上げを行わないと回答した企業は8.2%(20社)で、その理由として「受注額や利益率の伸び悩み」が最も多く挙げられました。
今後の課題と望まれる施策
今後、賃上げを進めるために求められる施策として、最も多かったのは「現場管理費・一般管理費の引き上げ」で54.9%(130社)。次いで「公共事業予算の増額と地方への重点配分」が49.4%(117社)となりました。
建設業界では、賃上げと人材確保を進めるためには、発注者側(国・自治体など)の適正な価格設定や工期の見直しが不可欠です。現場の実態を踏まえた柔軟な働き方や報酬体系の整備が求められています。