群馬県の建設業界における積算ルールが、2024年10月1日から大きく変わります。
県の建設企画課は、設計単価や歩掛(ぶがかり)の決定方法に関する運用方針を改定し、新たに「平均の直近下位」を採用する方針を明らかにしました。
この見直しは、工事や業務にかかる費用の見積もりをより適正に評価し、発注価格の精度を高めることを目的としています。これにより、見積もりの中でも極端に高すぎる、あるいは安すぎる金額を除外し、より実態に即した価格が採用されることになります。
平均値から±30%を超えた見積もりは除外
これまでのルールでは、すべての見積もりの平均金額を算出し、その中から±30%を超える金額を排除。さらに、その中で最も安い金額を歩掛(労務・資材などの単位コスト)として採用していました。
しかし今後はこの方法が変わり、±30%を超える見積もりは同様に排除されるものの、最も安い価格ではなく**残った見積もりの中から平均値(平均の直近下位)**を採用することになります。
例えば、以下のような5社からの見積もりがあったとしましょう。
- A社:100万円
- B社:105万円
- C社:110万円
- D社:160万円(高額)
- E社:70万円(低額)
平均値は109万円となります。この平均に0.7と1.3を掛けた範囲、つまり76.3万円~141.7万円を超える見積もり(E社とD社)は除外。残るA社・B社・C社の見積もりの平均(=105万円)が採用されるという仕組みです。
これにより、相場とかけ離れた見積もりによる影響を抑え、より実態に近い価格設定が可能になります。
妥当性が認められれば例外もあり
ただし、新ルールでは柔軟な運用も認められています。±30%の範囲を外れていても、見積もり内容に妥当性があると判断された場合、その見積もりを排除しないことも可能です。工種や業務の特殊性など、現場ごとの事情に応じた判断がなされると考えられます。
複数工種の場合の取り扱いも変更
複数の工種や業務が含まれる案件では、項目ごとに見積もられた金額を合計し、それを各社の見積もり件数で割って平均値を算出。こちらも同様に±30%を超えるものを除外したうえで、残った見積もりの平均価格を採用する仕組みです。
改定の背景と今後の影響
今回の改定は、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(改正品確法)」など、国全体の方針を受けて行われたものです。県は、この制度改正によって予定価格の適正化が進み、結果として建設現場で働く人々の待遇改善や資材価格の反映につながると期待しています。
また、労務費や資材単価の決定方法もこの新ルールに合わせて見直される予定で、統一的なルールのもとで積算が進むことになります。
適用開始は令和7年度の基準から
この新ルールは、2024年10月1日以降に起工する工事や業務から適用される予定です。同日には「令和7年度積算基準および標準歩掛」の改定も行われる予定で、県内の建設業界全体に影響を与えることになります。
群馬県内で建設業に携わる企業や技術者にとって、今回の改定は見積もりの提出方法や価格戦略に直結する重要な変化です。
今後も群馬県内の建設に関する最新ニュースや制度変更について、分かりやすくお伝えしていきます。