近年の建設業界では、人手不足の深刻化や高齢化が進む中で、生産性を高める技術開発が重要なテーマとなっています。そんな中、清水建設が開発した最新の建設ロボット「Robo-Spray II(ロボスプレー・ツー)」が注目を集めています。
このロボットは、建物の鉄骨などに行う「耐火被覆(たいかひふく)」の吹き付け作業を自動で行うために開発されたものです。従来、この作業はすべて人の手で行われており、高所作業や粉塵が多く発生する過酷な環境の中で、正確な吹き付けを行うには熟練の技術と体力が必要でした。
タッチパネル操作で直感的に使える新ロボット
「Robo-Spray II」の特徴は、タッチパネルで簡単に操作できる点にあります。
たとえば、作業員が耐火被覆を施す部材(S梁など)を画面から選び、表示される手順に沿ってボタンをタッチするだけで、あとはロボットが自動で吹き付け作業を行います。
ロボットには自動で移動・停止する機能や、レーザーなどによる位置合わせのセンサーも搭載されており、人の手による細かい位置調整が不要になっています。さらに、吹き付けノズルを自在に動かせる6軸のアームによって、細かな箇所まで均一に被覆を施すことが可能です。
実証実験では生産性が従来の約2.5倍に!
東京都内の大規模な病院建設現場では、実際にこのロボットを使った実証施工が行われました。作業員3人1組でロボットを操作し、1台で1日あたり約150平方メートルの吹き付け作業を安定的に完了。これは手作業と比較して生産性が約2.5倍向上したという結果になりました。
さらに、同じ人数でロボット2台を操作した場合は、生産性が約3倍まで高まることも確認されています。これは、人手だけでは到底実現できない効率化です。
建設現場の働き方が変わる?清水建設の今後の展望
今回のロボットは、主に鉄骨造のビルや商業施設、大規模病院などで使用される耐火被覆の工事に向けたものですが、今後の展開にも注目です。清水建設では、このロボットのさらなる改良を進めながら、他の作業にも対応できる建設ロボットの開発や、ロボット本体のコスト削減にも取り組んでいくとしています。
このようなロボット技術の進化は、今後の建設業界における「人と機械の協働」を加速させると見られています。特に、安全性の確保が難しい作業や、時間と労力がかかる工程での自動化が進めば、人手不足や作業者の高齢化といった業界の課題に対する有効な解決策となるでしょう。