日本政策投資銀行(政投銀)とそのグループのDBJアセットマネジメント、そして建築設計大手の日建設計が共同で進めた、大阪市中央区の「日建ビル1号館」の環境改修プロジェクトが完了し、8日に報道関係者向けに公開されました。このプロジェクトは、築20年以上のオフィスビルを対象にしたリノベーションと、ネットゼロエネルギー化を進める「ゼノベ」プログラムの初めての事例です。
ゼノベとは? 脱炭素化を目指す革新的な取り組み
ゼノベは、「ゼロエネルギービル」の略で、カーボンニュートラル(CO2排出量ゼロ)を実現するために既存のオフィスビルを環境的に改修する取り組みです。このプロジェクトの目的は、ビルの価値を高めながら、環境にも配慮した持続可能な開発を進めることにあります。ゼノベの特徴は、既存のビルの躯体をできるだけ活かし、無駄な外装改修を避ける一方で、建物の断熱性を大幅に向上させ、高効率の空調機器を導入することで、省エネ効果を最大化する点です。
日建ビル1号館:歴史と新しい環境性能の融合
「日建ビル1号館」は、1968年に日建設計の旧大阪オフィスとして完成した、7階建てのオフィスビルです。延べ床面積は4140平方メートルで、各フロアにはテナントが入居しています。今回のゼノベ改修では、外観はそのままに、内装は大きくスケルトン状態にして改修作業が進められました。例えば、5階から7階では、窓のサッシを後退させてバルコニーを作ることで、建物の外部に向けて断熱対策を講じました。また、4階以下のフロアには、木製の二重窓を採用することで、外部からの熱や寒さを効果的に遮断しています。
空調についても、大幅に改善が行われました。新しい空調システムでは、発熱量を従来の設計から34%削減し、エネルギー効率を高めています。さらに、LED照明とセンサー制御を導入し、無駄なエネルギー消費を防ぐ仕組みも取り入れています。
快適なオフィス空間を提供する「ウェルネス空間」
また、日建ビル1号館では、利用者がより快適に感じられるように、空間のデザインにもこだわりが見られます。例えば、各階の窓を開けることで、最上階の自動開閉窓が操作され、階段室を通じて建物全体に均一な換気が行われる仕組みを導入しました。これにより、室内の空気の質が保たれ、快適なオフィス環境が作り出されています。
トイレも木目調に刷新され、自然の温かみが感じられるデザインに変更されるなど、利用者が「ここで働きたい」と思えるような空間作りが進められています。これらは、エネルギー効率を重視しつつ、心地よさや働きやすさを重視した取り組みです。
政投銀の高田佳幸常務執行役員が語るゼノベの未来
このプロジェクトに関して、政投銀の高田佳幸常務執行役員は、「ゼノベは、実効性のある環境配慮の取り組みとして、今後も広く発信していきたい」と述べています。今後、他の築古ビルの改修にもゼノベの技術を活用し、さらなる環境改善を進めていく計画です。
ゼノベプロジェクトは、建物の価値を高めながらも、カーボンニュートラルを目指す重要な取り組みであり、今後の不動産業界における新しい基準を示すものとなるでしょう。