建設業に必要な技能を学べる職業訓練施設。その数や訓練の内容には、地域によって大きな差があることが、建設経済研究所の最新調査で明らかになりました。これは、厚生労働省の資料や各地の訓練実績をもとにした詳細な分析によるもので、建設業界の人材育成を考えるうえで、非常に重要なニュースです。
公共の職業訓練施設、全国で260か所に減少
かつて全国に347か所あった「公共職業能力開発施設」は、2023年度には260か所まで減少。その中でも、建設業関連の技能を学べる施設は全体の約67%、つまり175か所にとどまっています。
特に、都道府県が運営する職業能力開発校の数が大きく減っていることが目立ちます。施設が多いのは北海道、東京都、福岡県などですが、まったく施設のない県も存在しており、こうした地域では建設業に必要な技術を学ぶ機会自体が少ないのが実情です。
東日本に集中、西日本には不足傾向
今回の調査で明らかになったのは、職業訓練施設が東日本に偏っているという点です。北海道や東北地方には比較的施設が整っている一方で、西日本では施設が少なく、学べる内容も限られていることが分かりました。
例えば、静岡県の「富士教育訓練センター」や兵庫県の「三田建設技能研修センター」では、建設業に必要なさまざまな訓練メニューが用意されていますが、こうした施設は全国でも限られています。西日本ではこのような施設へのニーズが高まっていると分析されています。
学べる内容にも偏りが。土木系より建築系が多い?
職業訓練施設で学べる内容についても地域差があります。訓練の中心は木造建築や建築、電気、設備、住宅リフォームなどの建築関連分野が中心で、土木関連の訓練は相対的に少ないという実態も浮き彫りになりました。
また、建設業の中でも特に重要とされる「躯体工事(建物の骨組みを作る工事)」に特化した訓練科目は、ほとんど存在していないのが現状です。これは、現場で即戦力となる人材の育成には不十分といえるかもしれません。
認定職業訓練施設も減少中。企業主導の訓練も重要に
「認定職業訓練施設」も年々減少しています。2017年度には全国に1,138か所あったものの、2023年度には978か所に。これらは企業や訓練法人が独自に設けている施設で、約3割が企業単独で運営する形態です。
建設関係の訓練に関しては、全国で長期訓練が203施設、短期訓練が217施設実施されています。長期訓練施設は北海道、岩手、愛知などに集中。一方、短期訓練は全国に比較的分散していて、特に岩手県は短期訓練の施設数が多いことも特徴です。
今後の課題:施設の数だけでなく「内容」も問われる時代へ
施設の数だけでなく、訓練の内容や質にも地域差があることが分かりました。今後は、単に施設を増やすだけでなく、地域のニーズに合わせた多様な訓練メニューの提供が重要になります。
特に若い人材の獲得や再就職支援を考えると、実践的なスキルが学べる場の充実は建設業界にとって急務。今回の調査結果をきっかけに、地方自治体や業界団体による新たな取り組みが期待されます。