2025年4月、国土交通省が建築制度の将来像を描くための新たな議論をスタートさせました。
これは単なる法律改正ではなく、日本の建築制度全体を中長期的に見直すための大きな一歩です。
建設業界に迫る課題とは?
現在、建築や建設業界には多くの課題が山積しています。たとえば、
- 地球温暖化への対応(脱炭素社会の実現)
- 建築士や現場技術者の人手不足
- 高齢化する既存建物の有効活用
- 木材などの新素材の普及促進
こうした問題に対し、国土交通省は、目先の対応にとどまらず、今後5年、10年、20年先を見据えた建築制度のあり方を官民で考える場を設けました。
有識者が集結、3年ぶりの合同会議
この取り組みは、国交省の社会資本整備審議会(社整審)の下に設置された「建築分科会」「建築環境部会」「建築基準制度部会」の3つの専門部会が、2025年4月18日に約3年3か月ぶりとなる合同会議を開いたことで本格的に始動。
この会議では、住宅以外の建物(非住宅建築物)の質の向上や、木材を積極的に使う建築設計の評価制度の整備、さらには新素材・新技術の導入を促すインセンティブ制度の検討など、多岐にわたるテーマが議論されました。
今後の焦点は「改修」や「LCA」
近年、新築の需要が減りつつある中、今ある建物をどう活かすかが重要になっています。
特に注目されているのが、既存建築物の改修を促進する法制度への見直し。現行法は新築を前提に作られており、改修や維持管理に適した内容にはなっていません。委員からは「改修にこそ補助金や税制優遇を」といった意見も上がりました。
また、今後ますます重視されるのが「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」の導入です。
LCAとは、建物が建設されてから解体されるまでのすべての段階での環境負荷を評価する仕組みです。国は2028年度までにLCAを義務化する制度の創設を目指しており、それに先駆けて公共工事においてLCAに対応した新技術を導入する動きも出てきそうです。
今後の予定とビジョン策定までの道筋
今後は、以下の3つをテーマとした小規模会議体が別途設置され、さらに具体的な議論が行われます。
- 中長期ビジョンに向けた論点整理
- LCA制度の導入に向けた制度設計
- 集団規定(都市計画における建物の配置ルール)の見直し
これらの成果は、2025年秋頃の会議で中間報告として発表され、2027年春までに中長期ビジョンとして正式に取りまとめられる予定です。
建設業界が直面する課題は複雑化していますが、こうした中長期的な視点からの制度見直しは、現場で働く人たちにとっても、住まいや都市の未来にとっても非常に重要な動きです。今後の議論の進展に注目です。