日本建築学会(会長:竹内徹氏)は4月21日、「2025年日本建築学会賞」を含む各種表彰の受賞者を発表しました。学会賞は、建築分野における優れた業績を称えるもので、今回は論文・作品・技術・業績の4部門から13件が選出されました。
作品部門:現地審査を経て2件を選出
作品部門には60件の応募があり、最終的に8件を現地審査した結果、以下の2作品が選ばれました。
- 「天神町place」(伊藤博之氏/工学院大学教授)
- 「高槻城公園芸術文化劇場」(江副敏史氏、多喜茂氏、高畑貴良志氏/いずれも日建設計)
論文部門:構造・環境・計画の3分野で8件を表彰
23件の応募論文の中から、構造系3件、環境系3件、計画系2件、合計8件の論文が受賞しました。注目される研究としては、建物のライフサイクルアセスメントや都市建物群による複雑流体現象、テンセグリティ構造の応用研究などがあります。
技術部門:ヒアリング審査で1件に決定
8件の応募から2件をヒアリング審査し、以下の技術が受賞しました。
- 「建物内完結型バイオガスシステムの開発と展開」(舟川将史氏ほか/竹中工務店)
業績部門:現地・ヒアリング審査で2件を選定
22件の応募から6件を現地審査、2件をヒアリング審査した結果、以下の2件が選ばれました。
- 『新建築』誌の100年にわたる建築記録と展望(新建築社)
- 旧小菅刑務所庁舎の保存改修工事によるリビングヘリテージの実践(法務省、佐藤総合計画、清水建設ほか)
教育賞:建築教育の幅広い取り組みに対して授与
教育賞では、教育業績と教育貢献の2分野に分かれ、計4件が選出されました。
- 教育業績では、標準化気象データを活用した建築設計教育に長年貢献した赤坂裕氏(鹿児島大学名誉教授)が受賞。
- 教育貢献では、伝統建築模型の制作や左官技能教育、展覧会場設計などの実践教育が評価されました。
著作賞:専門的な査読を経て5件を選出
2019年6月1日~2024年5月31日に刊行された新刊を対象に、応募48件から10件を査読し、以下の5作品が選出されました。
- 『恣意と必然の建築-大江宏の作品と思想』(石井翔大氏)
- 『SSA-緊急事態下の建築ユートピア』(印牧岳彦氏)
- 『Large Outdoor Fire Dynamics』(樋本圭佑氏)
- 『評伝・西山夘三』(広原盛明氏)
- 『建築家として生きる』(松村淳氏)
奨励賞:将来性ある若手研究を15件表彰
構造・環境・計画の各分野から合計15件が奨励賞として選ばれました。独創性や萌芽性、今後の建築界への貢献が期待される研究が対象となっています。
文化賞・新人賞:建築文化の普及と若手支援を目的に選出
建築文化の発展に貢献した個人を対象とする文化賞では3名が表彰されました。また、若手建築家を対象とする作品選集新人賞では、40歳未満の設計者による16件(19名)の作品が選ばれています。