2025年4月、群馬県の農政部長に就任した岸篤志氏が、弊社のインタビューに応じ、農業と農村の振興についての抱負を語った。特に、本年度初めに発生した豚熱(CSF)への対応を振り返り、建設業関係者への感謝を表明した。さらに、2025年度には新しい「群馬県農業農村振興計画」の策定に注力する方針を示し、環境負荷低減や資源循環型農業の推進などについても具体的な取り組みを語った。
豚熱対応の感謝と農業振興への意気込み
岸部長は、「今年度早々に発生した豚熱対応では、特に建設業関係者の協力があったおかげで、迅速に防疫措置を完了できた」と述べ、関係者に感謝の意を表した。農政部としての使命は、「農業経営者がその力を最大限発揮できるよう、環境を整備すること」と語り、土地改良や機械導入などを通じて、農業の発展を支援することを強調した。
また、2026年度から始まる新しい群馬県農業農村振興計画に向けた準備に全力を注ぐとともに、環境負荷低減や持続可能な農業を進める方針を掲げた。
群馬県の農業と農村の課題
岸部長は、群馬県の農業・農村が持つ多面的な役割についても言及した。農業は単に食料供給にとどまらず、水源の保護や美しい農村景観の形成、さらには災害時の防災機能も担っている。しかし、農業者の高齢化や担い手不足、さらには都市化などの影響で、農地の減少が進んでいるのが現状だ。また、野生鳥獣による農作物被害や、豚熱や鳥インフルエンザといった新たな課題にも直面している。
こうした課題に対し、岸部長は「群馬県農業農村振興計画2021-2025」の実現に向け、農業・農村が持つ可能性を最大限に引き出す施策を推進するとともに、環境負荷低減や資源循環型農業の推進を重要な方針として挙げた。
防災・減災対策への取り組み
自然災害が頻発化する中、岸部長は群馬県が掲げる「災害レジリエンス№1」を目指す取り組みについても言及した。2021年に策定された「新・群馬県総合計画」では、災害から県民を守るための体制確立が最優先課題となっており、農政部は防災重点農業用ため池の安全性を高めるため、今後5年間で豪雨や地震対策を進める予定だ。
これにより、農業用ため池195カ所に対してハザードマップを作成し、地域住民にもその内容を周知するなど、ソフト・ハード両面から防災対策を進めていく計画だ。
ICT施工と働き方改革の推進
岸部長は、農業の生産性向上に向けたICT施工の導入についても触れた。現在、一部の工事でICTを試験的に導入しており、施工精度の向上や作業の効率化に一定の効果が見られるという。しかし、設備投資の高額さや工事費の増加といった課題もあり、今後は段階的に導入を進めていく方針だ。
また、建設業界全体の働き方改革の一環として、週休2日制の導入が進んでいることも報告された。群馬県建設業協会と連携し、建設業の労働環境改善に取り組んでいる。
建設業への感謝とメッセージ
最後に、岸部長は建設業界への感謝の意を表した。「農業農村振興事業において建設業関係者の協力が欠かせない。特に豚熱対応では、迅速かつ正確な作業をしていただいたことに感謝している」と述べ、引き続き農業と農村の振興のために協力をお願いした。
また、自然災害に備えるためには、防災・減災対策が重要であり、災害発生時には農業者が円滑に営農再開できるよう、迅速な復旧対応が求められると強調した。