群馬県富岡市にある富岡土木事務所。その所長を務める一倉史孝(いちくら・ふみたか)氏に、これまでのキャリアや地域の変化、そして今後の取り組みについてお話を伺いました。
一倉氏が富岡土木事務所に赴任するのは今回で4回目。新卒で最初に配属されたのも、同管内の下仁田事業所でした。配属当時、地域では「国道254号バイパス」の整備工事が最盛期を迎えており、活気ある現場でキャリアをスタートさせたと振り返ります。
現在では、国道254号バイパスは高崎市吉井町までつながり、沿道には新しい施設や店舗が立ち並ぶようになりました。「当時と比べると、風景はまるで別の場所のようです」と、その変化の大きさを語ります。
また、2014年6月には、世界文化遺産として「富岡製糸場」と「荒船風穴」が登録され、2023年3月には「上信越自動車道・甘楽スマートインターチェンジ」が開設されるなど、観光インフラも飛躍的に整備されました。「交通の利便性だけでなく、観光資源としての魅力も大きく高まりました。地域のポテンシャルは確実に上がっています」と語ります。
公共インフラの維持管理と防災対応の重要性
富岡土木事務所では、道路や橋、河川といった公共インフラの整備・点検・維持管理を担っています。さらに、台風や地震といった自然災害が発生した際には、迅速な対応が求められます。
「緊急時には、地域の建設業者の皆さんの力が欠かせません。協力を得ながら、どれだけ迅速に対応できるかが問われます。だからこそ、日ごろからの準備や意識づけを大切にしています」と一倉氏は話します。
特にこの地域では、令和元年に発生した東日本台風によって犠牲者が出た過去があります。「この災害を決して忘れてはいけない。県の整備プランにも掲げている“災害に強い群馬”を実現するためにも、河川整備や砂防ダムの設置など、防災・減災の取り組みを進める必要があります」と、強い決意をにじませます。
群馬の未来をつなぐ道路ネットワークの整備
富岡土木事務所の管轄内では、「西毛広域幹線道路」の一部区間がすでに開通しています。この道路は、群馬県西部の主要都市や観光地をスムーズにつなぐ重要な幹線道路です。
「現時点ではまだ全線開通しておらず、整備中の区間もあります。しかし、道路ネットワークとして本来の力を発揮するためには、全線の開通が不可欠です。今後も整備を着実に進めていきたいと考えています」と話します。
上信越自動車道整備の思い出と、技術者としての誇り
これまでに携わった事業の中で特に印象深かったのが、「上信越自動車道」の整備工事です。特にコロナ禍の中で行われた完成式典では、感染対策のために2会場をオンラインで結びながらの開催となるなど、工夫と苦労を重ねたそうです。
「厳しい工程の中で、妥協せずにより良いものをつくろうという技術者たちの誇りを感じました。現場での努力は本当に素晴らしいものでした」と、現場の熱意を称えました。
地元建設業との連携が地域を守る
一倉氏は、地域の安全と安心を守るためには「地元建設業者の存在が不可欠」だと繰り返し強調します。
「道路の補修や河川の点検、落石や倒木への対応、冬の除雪作業など、すべてにおいて地元の建設業の皆さんのご協力をいただいています。地域の人々が安心して暮らせているのは、まさにこうした方々のおかげ」と語ります。
「今後も、土木事務所と地元の建設業がそれぞれの役割を担いながら、協力して地域の暮らしを守っていきたい」との想いを語ってくれました。
プライベートでは自然とのふれあいも
一倉氏の趣味は音楽鑑賞とドライブ。休日には実家の庭木の手入れをするのが習慣だそうです。「木が大きく育っているので切るのも一苦労。でも、筋トレだと思って毎週やっています」と笑いながら話してくれました。
地域を見つめ、現場を支え、未来を形にする――群馬の建設を担う人々の姿が、そこにはありました。