2025年4月1日より、群馬県の県土整備部における最上位計画「ぐんま・県土整備プラン2025」が本格始動しました。このプランは今後10年間の社会資本整備の方向性を定めるもので、市町村や建設産業界からも注目を集めています。
今回は、プランの策定を主導した県土整備部の宮前勝美部長にインタビューを実施。新たなコンセプトである「地域ごとの災害対応組織力の維持」や、新プランに位置づけられた政策・重点事業の背景、担い手不足という建設業界の課題にどう向き合うのかなど、具体的な話をうかがいました。
―策定から始動までの1年を振り返って、どのような思いがありますか?
宮前部長:
振り返ると、非常にやりがいのある1年でした。部長に就任してすぐに、最上位計画である県土整備プランの見直しという大役を任され、大きな責任を感じていました。
かつて建設企画課の政策係長として「県土整備プラン2013」の策定にも関わった経験がありましたが、部長としての視点での策定作業はまったく別物です。県民の暮らしを左右する計画だけに、県議会、市町村、建設業界など、あらゆる関係者の声を丁寧に拾い、知事と幾度も議論を重ねながら、何が本当に必要かを見極めてきました。
―前回のプラン「2020」と比べ、今回の改定で特に重視した点は?
宮前部長:
前回は、令和元年東日本台風の被害を受け、水害対策が中心となり、新規事業としては「渡良瀬幹線道路(新里笠懸工区)」のみでした。今回は以下の3つの視点から見直しを進めました。
- 資材価格高騰への対応と事業費の見直し・コスト縮減
- 自然災害への対応強化(能登半島地震などを教訓に)
- 地域貢献やレジリエンスを重視した複合的なストック効果の追求
これにより、計画には「8つの新たな中心的事業」が明確に位置づけられ、事業着手へと大きく前進しました。これらは知事の英断により実現したものであり、「ぐんまの未来を切り拓く礎」になると確信しています。
―具体的には、どのようなプロジェクトが進展したのでしょうか?
宮前部長:
たとえば、県庁と前橋駅を結ぶ空間整備では、歩行者と公共交通を主役にした「ウォーカブル」な空間創出を目指す「クリエイティブシティ構想」が進展。国内外からアイデアを募るデザインコンペも実施し、3月には最終審査を行いました。
また、県有施設として初のPFI方式で進める敷島公園新水泳場では、国内最大級の純木造屋根を持つ国際基準の施設が着工。いずれも「県土整備プラン2025」に位置づけられ、群馬の未来を形づくる重要な一歩となっています。
―新たなコンセプト「地域ごとの災害対応組織力の維持」について詳しく教えてください。
宮前部長:
この組織力とは、地域の建設業者が地元の状況を把握し、災害時に迅速かつ機動的に対応する「現場力」を指します。人員確保や建設機械の充実がその中核です。
たとえば、2023年の7月~9月には大雨・洪水警報が70回以上発令され、前年の4倍以上。山間部では例年を大幅に超える豪雪もあり、道路封鎖を余儀なくされたケースも発生しました。こうした現実を踏まえ、地域単位での災害対応力の維持・強化は極めて重要だと考えています。
2024年3月には、群馬県建設業協会からも災害対応組織力に関する調査結果が発表され、12年前と同水準の人員と機械が確保されていることがわかりました。
―担い手確保の観点からはどのような方針をお持ちですか?
宮前部長:
働き方改革やICT活用による生産性向上を含めた支援はもちろんですが、最も大事なのは公共事業の安定的な投資を続けることです。財政の健全性を意識しつつも、「住民の安全・安心を守る地域密着型事業」や、「未来を拓く中心事業」にはしっかりと投資する。このバランスを保ちながら地域ごとの取り組みを進めていきます。
―最後に、「ぐんま・県土整備プラン2025」に込めた想いをお願いします。
宮前部長:
このプランは、県土整備部の職員一人ひとりが力を合わせて作り上げた“努力の結晶”です。関係するすべての皆さまと議論を重ね、知恵を出し合って導き出した最善の形です。
これからの10年、群馬県の社会資本整備が地域と未来の両方に貢献できるよう、誠実に、そして確実に実行していきたいと思います。