国土交通省、砂防工事の遠隔施工要領案を策定|平時活用で生産性向上へ【建設ニュース】

全国 建設ニュース

砂防工事における「遠隔施工」を平時にも活用へ

国土交通省は、砂防工事の現場で活用するための「砂防工事における遠隔施工要領(案)」を策定しました。
これまでは災害復旧工事を中心に使われてきた遠隔施工技術を、今後は平常時の工事にも活用していく方針です。
要領案では、遠隔施工を行う際の検討フローや、必要となる機材・通信環境、事前準備、施工管理の注意点などをまとめています。

遠隔施工は、安全性向上や人手不足対策に効果があるとされており、国交省はこれをきっかけに普及拡大を目指しています。
建設業界の生産性向上に向けた取り組みの一環として、今後注目が集まりそうです。

遠隔施工の対象工種と概要

今回の要領案では、遠隔施工が適用できる工種として、次の4種類を挙げています。

  • 除石工(石を取り除く作業)
  • 大型土のう積み工(大型の土のうを設置する作業)
  • 構造物工(堤防や護岸などの構造物を造る作業)
  • 砂防堰堤工(砂防ダムなどを設置する作業)

それぞれの工種について、使用する建設機械や、完成形の管理ポイントも具体的に示されています。
たとえば、大型土のう積み工では、クレーンやバックホウ(油圧ショベル)を遠隔操作で動かし、安全に大型土のうを設置する方法が解説されています。

通信・映像技術の重要性と方式の違い

遠隔施工のカギとなるのは、現場の状況を把握するための通信・映像技術です。
今回の要領案では、次の3つの方式について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを分かりやすくまとめています。

  • 直接目視方式:現場のすぐそばで操作し、直接確認する方法
  • 有線通信方式:ケーブルを使って機械とオペレーターをつなぐ方法
  • 無線通信方式:無線LANやモバイル回線を使って遠隔操作する方法

例えば、無線通信方式は距離の制限が少ない反面、電波の状況によっては遅延が生じるリスクもあるため、事前の通信環境確認が重要とされています。

発注時に必要な準備・注意点も明記

遠隔施工を導入するにあたり、発注者側にも準備や配慮が求められます。
要領案には、次のようなポイントが記載されています。

  • オペレーター(重機の遠隔操作員)の確保
  • 遠隔機械と有人機械(従来型)の混在対応
  • 日ごとの作業時間設定や工程表の作成
  • 契約書や仕様書に特記すべき内容の例示

これにより、発注担当者がスムーズに遠隔施工を取り入れられるよう工夫がなされています。

背景:災害対応から進化してきた遠隔施工

砂防工事で遠隔施工が本格的に導入されたのは、1990年代初頭の雲仙・普賢岳噴火時の土石流対策がきっかけです。
その後も、有珠山噴火、紀伊半島豪雨、熊本地震といった大規模災害を経験する中で、技術は着実に進歩してきました。

最近では、地域の中小建設会社が試験的に遠隔施工を取り入れる事例も出てきていますが、まだまだ普及には課題が残されています。
特に、平常時の一般工事での活用例は少なく、直轄工事の試行が中心となっているのが現状です。

今後5年での普及拡大を目指す

国交省が策定した「i-Construction2.0」のロードマップ(2024年度版)では、今後5年以内に砂防工事での遠隔施工活用を大幅に拡大する方針が示されています。
これにより、建設現場の安全性向上、人手不足解消、生産性アップなど、さまざまな効果が期待されています。

今後、災害対応だけでなく、日常の砂防工事でも遠隔施工技術が当たり前になる時代が近づいていると言えそうです。

タイトルとURLをコピーしました