地震をきっかけに、日本のインフラ点検技術が注目
2025年3月にミャンマーで大きな地震が発生したことを受けて、日本の国土交通省は隣国・タイでの道路インフラの安全確保を支援する取り組みを開始しました。その一環として、4月10日にタイのバンコク市内で「技術協力ワークショップ(WS)」が開催されました。
このワークショップには、タイの運輸省関係者や地元建設会社の技術者など、50人以上が参加。日本が培ってきた道路や橋梁の点検技術が紹介され、タイ国内のインフラ保全に役立てられることが期待されています。
タイでは地震後の点検技術が未発達
タイは日本と異なり、地震の発生が少ない国です。そのため、地震後に道路や橋などの構造物をどのように点検すべきかといった知見が乏しく、今回のような支援が強く求められていました。
実際に、建設中の高架道路が崩落した事故や、地震の影響によって高層ビルが一部倒壊した事例もあり、タイ国内ではSNSを中心に「このままでは危ないのでは」といった不安の声が広がっています。そうした背景から、信頼できる点検システムを導入する動きが急速に高まっています。
国交省が専門家チームを現地へ派遣
今回の技術支援にあたっては、国交省から嶋田博文氏(道路局企画課国際室長)を中心とした専門家チームが現地に派遣されました。チームには、土木研究所(土研)や首都高速道路株式会社の技術者も加わり、実践的な点検方法や過去の事例を交えながら、タイ側と意見交換を行いました。
特に、首都高速道路会社からは、海外インフラ事業の経験を持つ湯田坂幸彦氏(海外・社会インフラ事業部担当部長)など、実績豊富なメンバーが参加。日本国内で行われている高精度な点検・診断の方法を紹介しながら、タイ国内への応用について議論を重ねました。
建築分野への支援も視野に
今回の支援は「道路インフラ」が中心でしたが、タイ政府からは「高層建築物」の分野における支援の要望も寄せられています。これを受け、国交省では建築分野の技術支援も視野に入れており、今後は建築技術者の派遣も検討される見通しです。
今後、インフラと建築の両面で、日本とタイの技術協力がさらに深まり、アジア地域における建設安全のモデルケースとなる可能性もあります。
信頼性の高いインフラ点検体制の確立へ
今回のワークショップは、国交省によるタイ支援の第2弾として実施されたものですが、初回は4月3日に専門家を派遣し、タイ政府関係者と直接意見を交わすなど、継続的な対話が行われています。
地震後の道路点検、構造物の安全確認、そして市民の不安を払拭するための制度整備——こうした日本の技術とノウハウは、今まさにタイの建設現場で求められています。今後も、日本の技術が海外のインフラ整備にどのように貢献していくのか、その動向に注目が集まります。