群馬県中之条町にある中之条土木事務所に、木内弘二氏が30年ぶりに戻ってきました。
木内氏はこれまで「八ッ場ダム」の完成や「上信自動車道」の建設といった群馬県内の大規模プロジェクトに関わってきた経験を持ちます。今回の異動に際し、「吾妻地域で暮らす人々の生活を支え、未来をつくる社会資本整備に、職員一丸となって取り組んでいきたい」と力強く抱負を語りました。
自然豊かな吾妻地域、しかし災害リスクも…
木内氏は、吾妻地域について「温泉地や観光資源が豊富で、草津温泉、四万温泉、万座温泉などを目当てに一年中観光客が訪れる地域」と紹介します。
一方で、浅間山や草津白根山といった活火山があり、急峻な山間部も多いこの地域は、大雨や積雪に加え、噴火や土砂災害といった自然災害リスクと常に向き合っています。
特に、土石流や落石対策は重要課題です。災害発生時にも地域の交通を確保するため、「災害に強い道路ネットワーク」の整備が急務だと指摘しました。
現在進めている主要な建設プロジェクト
今後の事業計画として、木内氏は具体的に次の工事を挙げました。
- 県道植栗伊勢線、県道嬬恋大桑線芦生田工区の道路改築
→ これらは「上信自動車道」へのアクセス強化のため、上信自動車道建設事務所と連携して進めています。 - 国道146号、国道292号の整備
→ 草津温泉などへの観光アクセス道路であり、現道の拡幅や登坂車線の設置を着実に進めていく予定です。
たとえば、国道292号は草津温泉から志賀高原へと続く「志賀草津高原ルート」としても知られ、冬季閉鎖もある道です。こうした観光ルートをより安全で快適なものにすることは、地域経済の活性化にも直結しています。
思い出に残る建設プロジェクト
過去のキャリアの中で、特に印象深かった仕事について聞くと、木内氏は「上信自動車道建設事業」と即答しました。
2011年度から4年間、渋川土木事務所で担当職員や係長として、詳細設計→用地調査→用地買収→工事着手と、一連のプロセスすべてに関わった経験を振り返ります。
特に地元住民向けの説明会を何度も開催し、東京電力やJRなどとの調整を粘り強く重ねたことで、課題解決力が飛躍的に高まったと語りました。
「地元の理解を得ることが、インフラ整備には不可欠」と改めて実感したそうです。
若手職員へのメッセージ
若い世代に対しては、「IT技術や情報収集能力を積極的に業務に活かしてほしい」とエールを送ります。
加えて、「困ったときは、一人で抱え込まず、上司や先輩にどんどん相談してほしい」と温かい言葉も。
デジタルに強い世代ならではの力を活かし、組織全体の底上げを期待している様子が伝わってきました。
建設業界への感謝と期待
建設業界に対しては、「地域の安全・安心を守るかけがえのない存在」と感謝を述べる一方、
「働き方改革」や「業界の魅力発信」を通じて、次世代の担い手確保に一緒に取り組んでいきたいと話しました。
具体的には、女性技術者や若手職人の活躍推進、現場のICT活用による効率化など、変化への対応を呼びかけています。
休日の楽しみは「釣り」と「包丁研ぎ」
オフタイムの楽しみについても教えてくれました。
もともとは海岸からイカやアジを釣っていたそうですが、最近では乗合船に乗り、イカ、マダイ、タチウオ、ヒラメなど、さらに大物狙いに挑戦しているとのこと。
釣った魚を自分でさばくために、刃物研ぎにもハマり、自宅で包丁やナイフを丁寧に研いでいるそうです。
「最初の頃はすぐ切れ味が落ちてしまったけれど、最近は研ぎの腕も上達してきました」と笑顔を見せました。
将来は、自分で釣った大物を自分でさばき、美味しく食べるのが目標だと話してくれました。