五洋建設は、シンガポールを拠点に、数々の難関工事を成功させてきました。その成功の背景には、強力な人材のネットワークと現地での戦略的なパートナーシップがありました。シンガポールでの主な工事実績としては、大型病院の建設「ECC&NDCS」、重要な道路トンネル「N105」、そして国境を越える鉄道施設の建設「T232」などがあります。これらのプロジェクトでは、シンガポールをはじめ、韓国、マレーシア、バングラデシュ、インドネシア、ベトナムなど、多国籍の専門家が一丸となり、質の高い施工を目指して活動してきました。
「人材」が成功の鍵:シンガポールでの事業運営
五洋建設のシンガポールでの成功の要因の一つは「人材」にあります。現在、同社のシンガポールオフィスには約700人の従業員が働いており、その60%がシンガポール人や永住権保持者(PR)です。シンガポール国内の建設プロジェクトでは、主要ポストをシンガポール人が担い、現地のニーズに合わせた組織運営を行っています。このように、現地化を進めることで、シンガポール市場における競争力を高めています。
さらに、五洋建設は、現地の設備会社や建設会社と提携を強化し、事業基盤を拡大しています。特に2020年には、機械・電気設備の分野における強化を目的として、シンガポールの「UG M&E」を子会社化しました。この動きにより、より高度な技術力を持つ企業体制を整え、シンガポール国内での高難度工事に対応できる体制を構築しました。
シンガポール市場の競争と成果
シンガポールの建設市場は非常に競争が激しく、シビアな環境が続いています。しかし、五洋建設はその中でも着実に実績を上げ、過去10年間で海外事業を拡大しました。清水琢三社長は「シンガポールでの事業運営には、現地の協力業者やサプライヤーとの信頼関係が欠かせない」と語り、その信頼をもとにシンガポール国内の大型データセンターや設備工事などを手掛けてきました。
五洋建設のシンガポールでの成功は、単なる市場拡大にとどまらず、他国、特に香港やインドネシア、ベトナムなどの東南アジア市場にも広がりを見せています。例えば、2025年にはベトナム進出30周年を迎え、2026年には香港進出40周年を迎える予定です。ベトナムでは現地法人を新たに設立し、日系の建築案件にも積極的に取り組む方針です。
海外事業の今後の展望
五洋建設は今後もシンガポールを拠点に、東南アジアを中心に事業を拡大していく計画です。これまでの経験を活かし、地域に密着した施工や技術提供を行いながら、さらなる発展を目指しています。また、海外事業の強化に伴い、国内の建設業界にも良い影響を与えると期待されています。
五洋建設は、シンガポールを中心に成長し続けるだけでなく、世界中の建設業においても存在感を増し続ける企業として、今後の動向に注目が集まります。