2024年3月、日本の国土交通省と国内の建設会社などが連携して設立した「日ウクライナ・国土交通インフラ復興に関する官民協議会(JUPITeR=ジュピター)」が、本格的に始動しました。ウクライナの戦後復興に向け、日本の建設会社が積極的に関わる動きが始まっています。
ウクライナ復興に必要なインフラ整備、日本の技術に期待
ウクライナ国内では、戦争によって多くのインフラが破壊されており、再建が急務です。世界銀行の調査によると、その復興需要は約5,240億ドル(日本円でおよそ79兆円)にも上るとされています。特に深刻なのは、エネルギー関連施設や道路・鉄道などの交通インフラ。中には、重要な橋を復旧させるのではなく、トンネル化するという大胆な構想も検討されています。
また、国内外へ避難していた住民が帰国することを想定し、住宅の再建や新規供給も必要不可欠です。こうした状況の中で、日本の高い技術力と資金力に対する期待が高まっています。
遠隔施工技術に大きな注目、日本独自の強みが評価される
現地を訪れたミッション団は、国交省の小笠原憲一官房海外プロジェクト審議官をリーダーに、ゼネコンや建設コンサルタント、商社、流通業者など計15社・17名で構成されました。首都キーウでは、再開発の現場視察や政府機関・経済団体との会談も行われました。
その中で特に注目を集めたのが、日本の「遠隔施工技術」です。これは建設機械の操作などを遠隔で行うことができる技術で、戦争の影響により現場作業員が不足しているウクライナにとって、大きな可能性を秘めています。
たとえば、出征している男性に代わり、女性や戦傷者が建設工事に関わることができる点や、安全な場所から作業できることで人的リスクを減らせる点が評価されました。遠隔施工は、日本が世界をリードしている分野の一つであり、今後の国際展開にも期待が持てそうです。
「ビルド・バック・ベター」の考え方で新たな街づくりへ
ウクライナ側との会談では、「元に戻すのではなく、より良くする(ビルド・バック・ベター)」という言葉が繰り返し語られました。単に復旧するのではなく、将来の成長を見据えた街づくりを目指す姿勢が印象的です。
実際にキーウの市街地では、戦時下であるにもかかわらず、平穏な日常が営まれていました。防空網の整備により、着弾被害は少なく、市民も空襲警報に慣れて避難しないケースが多いとのことです。
今後の展望、日本からの継続的な支援と関係構築へ
現在、外務省はウクライナ全域に対して退避勧告を出しており、訪問には高いハードルがあります。しかし国交省は、今後も分野ごとに現地企業との連携を深めるため、次回訪問の計画を進めています。次回は、遠隔施工技術の実演(デモンストレーション)も視野に入れており、具体的な協力体制の構築が期待されています。
ウクライナの復興という巨大プロジェクトに対し、日本の建設業がどのように貢献していくのか——。今後の動きに注目が集まっています。