【建設ニュース/人事】元鹿島副社長・田代民治氏が逝去 ― 土木学会会長として現場改革に尽力

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2025年4月13日、建設業界に多大な影響を与えてきた田代民治(たしろ・たみはる)氏が、千葉県内の病院で亡くなりました。享年76歳。田代氏は大手ゼネコン・鹿島建設の元副社長であり、土木学会の第104代会長も務めた人物です。葬儀はご家族のみで執り行われ、喪主は妻の睦美さん、長男の一洋(かずひろ)さんが務められました。田代氏は福岡県の出身です。

ダム建設の最前線で技術を磨く

1971年に東京大学工学部土木工学科を卒業後、鹿島建設に入社。以降、栃木県日光市の川治ダム、佐賀県唐津市の厳木ダム、神奈川県相模原市の宮ヶ瀬ダム、広島県安芸太田町の温井ダムなど、全国各地の大規模ダム工事に携わりました。合計7カ所のダムプロジェクトで技術指導にあたり、現場の第一線で活躍。土木技術者としての経験と知見を積み重ね、ダム工事に関する専門家として社内外から高く評価されていました。

経営幹部として現場改革を推進

その後は、東京土木支店長、土木管理本部長、専務執行役員などを歴任。2010年には鹿島建設の代表取締役副社長に就任し、企業経営においても重責を担いました。現場経験の豊富さを活かしながら、技術と経営の両輪をバランス良く推進しました。

また、現場の生産性と安全性の向上にも注力。日本建設業連合会(日建連)の公共工事委員長を務めた際には、プレキャスト(PCa)工法などの導入を推進し、作業の効率化や品質向上に貢献しました。

博士号取得と土木学会会長としての活動

田代氏は、技術者としての向上心を持ち続け、2016年3月には「コンクリートダムにおける施工の高速化に関する研究」によって、東京大学から博士(工学)の学位を取得。同年6月には、公益社団法人土木学会の第104代会長に就任しました。

会長としての活動では、「国土の安全・安心を支えるのは土木技術者の使命である」と強く訴え、若手技術者や女性技術者が活躍できる環境整備に尽力。建設業の現場におけるイノベーションを推進し、業界全体の意識改革に貢献しました。

“胆大心小”のリーダー像

田代氏は、思い切りの良い行動力と、細やかな気遣いを併せ持った“胆大心小”のリーダーとして、多くの関係者から慕われてきました。技術者としても経営者としてもバランスの取れた人物であり、建設業界に残した足跡は非常に大きなものがあります。

その功績と人柄は、今後も多くの技術者たちの手本となるでしょう。建設業界において「最近の偉人」とも言える存在として、田代氏の名前は長く語り継がれるはずです。

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