建設業界の動向に注目が集まる中、建設コンサルタンツ協会(建コン協)は、国土交通省の地方整備局などの公共発注機関との意見交換を、2024年7月10日から全国9地区で実施することを発表しました。この取り組みは、2024年度に改正された「公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)」の実施を見据えたもので、業界の今後を左右する大きな動きと言えます。
「知的財産権」ルールの明確化を目指す
今回の意見交換で特に注目されているのが、「知的財産権の取り扱いに関するルールづくり」です。これまで、業務で作成された写真・図面・データ・報告書などの著作物については、各プロジェクトごとに個別で協議されてきました。しかし、それでは運用にバラつきが出てしまい、関係者にとって分かりにくい状況が続いていたのが現状です。
例えば、「研究開発で得られた成果物(著作物)は他の用途で使用できるのか?」という点についても、明確な基準がなかったため、トラブルや混乱が生じるケースもありました。今後はこうした曖昧な取り扱いを見直し、「AIの活用時の著作権」や「ソースコードの再利用の可否」、「業務報告書の著作権の帰属」など、より具体的なガイドラインを作成する方向で議論が進められます。
協会では、受注側(民間事業者)に著作権を認める方向での見直しも要望しており、建設コンサル業界の知的財産管理が大きく変わる可能性があります。
意見交換の主なテーマは?
建コン協が発表した意見交換の主なテーマは以下の通りです。
- 技術者単価の継続的な引き上げ
→ 若手技術者の確保や人材不足の解消に向けて、安定した報酬体系の構築を目指す。 - インフラ事業量の拡大と好循環の実現
→ 継続的な事業発注により、民間企業の成長や技術力向上にもつなげる。 - 年度繰り越し業務における「コンサル版スライド条項」の導入
→ 事業の遅延が生じた場合でも、契約金額を柔軟に見直せる仕組み。これは「さいたま市」や「千葉市」での試行事例が参考とされており、全国的な普及を目指す。 - 設計変更時の新規工種に対する落札率の適用除外
→ 新しく追加された工種に、当初の落札率を無理に適用せず、現実的な価格設定ができるよう配慮。 - 工期延長時の管理費の追加計上
→ 実際の工期が延びた場合でも、適切に費用を加算できる体制を整備。 - 成果物の作成費を経費として認める取り組み
→ 成果物の一般公開に必要な資料やデータ作成に関わる費用も、正当に評価されることを目指す。
全国9地区での開催スケジュール
全国9つの支部で順次開催される意見交換会の日程は以下の通りです。
- 中国支部:7月10日(水) 15:00~17:00
- 北海道支部:7月24日(水) 15:00~17:00
- 九州支部:8月7日(水) 16:00~18:00
- 四国支部:8月20日(火)
・第1部:15:00~16:05 ・第2部:16:20~17:10 - 東北支部:8月28日(水) 15:00~17:00
- 近畿支部:9月2日(月) 16:00~18:00
- 北陸支部:9月25日(水) 15:00~17:00
- 関東支部:10月3日(木) 15:00~17:00
- 中部支部:10月9日(水) 16:00~18:00
この意見交換会は、建設業界の未来に大きな影響を与える可能性があり、公共工事に関わる事業者や設計者、行政関係者にとっては非常に重要な場になるといえます。
まとめ
建設業界では今、AI活用やデジタル化が急速に進む中で、知的財産権の整理は避けて通れないテーマです。建設コンサルタント業務に携わる方や、公共工事に関心のある方にとって、今回の動きは見逃せないニュースです。
今後の議論の進展に注目が集まります。