【建設ニュース・東北整備局】2025年度の事故防止目標を発表|「予定外作業」と「省略行動」の根絶へ

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■事故防止に本腰、東北整備局が2025年度の取り組みを公表

2025年4月、国土交通省東北地方整備局が、2025年度の工事に関する事故防止目標を発表しました。
発表の背景には、近年、全治1カ月以上の中程度のケガを伴う事故が全体の半数近くを占めているという深刻な現状があります。

特に問題視されているのは、「予定外作業」と「省略行動」の2つ。これらが事故の主な原因になっており、同整備局は今年度、この2点を徹底的に排除する方針を打ち出しました。

■事故ゼロに向けた5つの重点施策

事故防止のために、以下の5つの重点施策が掲げられています。

  1. 「墜落・転落」「機械・工具の取り扱い」「建設機械」に関する現場対策の徹底
    → たとえば、高所作業の足場の確認や、クレーンの稼働エリアの明示などが該当します。
  2. 予定外作業・省略行動の排除に向けた徹底的な取り組み
    → 作業手順書にない独自判断での作業や、準備不足による手順の省略を防ぐため、現場ごとのルールを設け、朝礼やKY活動(危険予知活動)を強化します。
  3. 新規入場者・下請業者への安全教育の徹底
    → 特に事故が多いのは、入場してから2週間以内の作業員。安全パトロールを強化し、具体的な危険事例を共有することで事故を未然に防ぎます。
  4. 物損や公衆災害の防止策を強化
    → 近年、道路工事などで「埋設物(例:水道管や電線)」を誤って損傷する事故が急増しています。発注者は設計図に正確な位置を記載し、受注者は事前確認を徹底することで、こうした事故の防止につなげます。
  5. DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用による事故対策の推進
    → 例えば、重機が人に近づくとアラームが鳴る「接近警報システム」や、作業現場を24時間モニタリングできるウェブカメラの導入、さらにVR(仮想現実)によるリアルな安全訓練などが挙げられます。IoT機器を使った熱中症対策にも注力しています。

■事故の多発に対する現場の対応

同局によると、新しく現場に入った作業員のうち、事故に遭うケースの約7割が入場後2週間以内に集中しています。
こうした傾向を踏まえ、初期の安全教育や巡視をより丁寧に行うことが重視されています。

また、近年の気候変動を受けて、熱中症対策も欠かせません。空調服の支給や水分補給の徹底、暑さ指数を計測するセンサーの活用など、現場では工夫が進んでいます。

■事故件数は増加傾向、迅速な対応が求められる

2024年度の東北地方整備局管内での事故件数(速報値)は121件で、前年より28件の増加となりました。
内訳は以下の通りです:

  • 労働災害:39件(前年比+1件)
  • 物損公衆災害:79件(前年比+25件)
  • 死傷を伴う公衆災害:3件(前年比+2件)
  • 死傷者数:39人(前年比+2人)

事故を少しでも減らすためには、施工計画の段階からの対策、現場での安全教育、デジタル技術の活用など、多方面からの取り組みが必要です。


■まとめ

今回の事故防止目標は、現場で働くすべての人にとって非常に重要な内容です。特に、「いつもと違う作業」や「ちょっとした省略」こそが、大きな事故につながることを再確認する必要があります。

「建設現場の安全」は、誰かひとりの責任ではなく、現場に関わる全員が共通意識を持つことで初めて守られます。

今後も、建設業界全体での安全意識向上に注目が集まります。

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