建設業界で活躍する人材の育成を支えてきた総合資格学院に、2025年4月1日付で新たな社長が就任しました。新たに舵取りを担うのは、これまで教務本部の責任者として活躍してきた佐藤拓也氏。
同氏は、「1級建築士の合格者数ナンバーワン」を誇る実績に満足することなく、今後は「受講生ファースト」「質の向上」にも重点を置いた改革を進めていくとしています。
■就任の抱負――“受講生ファースト”で教育を再設計
佐藤社長はまず、「2年前に“マーケットイン”“受講生ファースト”をキーワードに経営方針を大きく見直した」と語ります。これは、企業が一方的に商品を提供するのではなく、「受講生のニーズや悩み」に応じて講座内容や学習環境を設計し直すという発想です。
建設業界の資格取得を目指す人々にとって、試験合格は大きな目標です。現在、1級建築士合格者における同社のシェアは圧倒的ですが、「それに満足してはいけない」と佐藤氏。
「合格者数だけでなく、受講生が納得し満足できる質の高い教育を提供していくことが、これからの課題だ」と話しています。
■組織改革――4ブロック体制で現場主導の運営へ
2024年11月、総合資格では全国を「北日本・関東・中日本・西日本」の4つのブロックに分けた新体制を導入しました。
従来のトップダウン型ではなく、各地域ごとの特色を生かしたボトムアップ型の運営を目指しています。
人材を再配置し、現場スタッフ自身が運営を主体的に行う風土を醸成。変化の激しい社会情勢に対応するため、柔軟でスピード感のある組織づくりが進められています。
■注力分野――対面とオンラインを組み合わせた講義へ
今後注力する事業としては、従来通り「建築士」「施工管理技士」「建築設備士」などの資格講座が中心となります。
しかし、講義のあり方は大きく変わりつつあります。
佐藤社長は「人と人が向き合うライブ講義の良さを生かしながら、オンラインなど新しい形にも力を入れていく」と述べています。
さらに、AIやLMS(学習管理システム)を活用した教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも注目。例えば、受講生一人ひとりの理解度に応じたカスタマイズ学習や、模擬試験結果のデータ分析による学習アドバイスなど、テクノロジーを活用した新サービスの展開が期待されています。
建築学生支援――建築の道を志す若者たちにエール
建築系の大学・専門学校で学ぶ学生に向けた支援活動も、同社の大きな柱です。
「建築を学んでも、卒業後に他業界へ進む学生も多い。しかし、せっかく建築を学んだなら、その知識を生かして業界に進んでほしい」。
その思いから、学生向けのイベントやキャリア支援にも積極的に取り組んでいます。
実務経験の場を提供――「アーキテクトスタジオ」の挑戦
2023年から本格始動した「総合資格アーキテクトスタジオ」では、自社物件の改修・修繕・監修などを通じて、若手建築士候補たちに実務経験の機会を提供しています。
建築士の受験要件が変わったことで、知識はあるが現場経験がない若手受験生が増えており、その受け皿として大きな役割を果たしています。
実際の物件を教材として活用することで、講義と現場のギャップを埋め、より実践的な学びへとつなげていく狙いです。
佐藤社長は、若い頃に習っていたタップダンスを再開したいという一面も持ち合わせる人物。しなやかでリズム感あるステップと同様に、これからの総合資格も柔軟かつ確実な歩みで、建設業界に貢献していくことが期待されます。