建設業界で働く技能者のキャリア形成を支援する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」に、新たな動きが出ています。国土交通省は2025年4月1日付で、土工職種の能力評価基準を改定し、厚生労働省が新たに認定した民間の職業能力検定をCCUSの評価に活用できるようにしました。これにより、今まで評価の対象とならなかった職種の技能者にも、キャリアアップの道が開かれることになります。
背景にあるのは、「団体等検定」の登場
今回注目されたのは、「団体等検定」という新たな仕組みです。これは2024年3月に厚生労働省が創設した制度で、企業や団体が実施する検定を、国が一定の基準で認定するものです。
この仕組みの第一号として認定されたのが、「コンクリート打込み・締固め工」に関する検定です。これは、建築現場でコンクリートを流し込み、振動機で締め固める重要な作業を担う技能者を対象としたもので、日本建設躯体工事業団体連合会(略称:日本躯体)が以前から社内検定として運用していたものです。
これまでの社内検定は、実施団体の会員企業に勤務している人だけが受験可能でした。しかし、今回「団体等検定」として認定されたことで、会員以外の技能者も受験できるようになり、より多くの人に門戸が開かれました。
建築分野の技能者にもチャンスが広がる
これまでCCUSの能力評価では、主に土木分野を前提とした「土工」職種の基準が用いられていました。しかし、建築分野で働くコンクリート工の技能者には、その基準が合わず、正当な評価がされにくいという課題がありました。
今回の基準改定では、「土工」の能力評価に建築分野の技能者にも対応できる視点を追加。新たに認定された団体等検定の合格者を、次のように位置付けました:
- レベル2:コンクリート打込み・締固め工 2級
- レベル3:コンクリート打込み・締固め工 1級
これにより、建築現場で活躍する多くの技能者が、正当に能力を評価され、将来のキャリアパスを描きやすくなったのです。
若手技能者の育成にも効果が期待される
特に建築現場のコンクリート作業を担う職種は、高齢化が進んでおり、若年層の人材確保が急務となっています。今回の評価制度の拡充は、「しっかりと評価される仕組みがある」という安心感を若手に与え、業界への新規参入を促す効果も期待されています。
たとえば、これまで「とび工」や「鉄筋工」などには明確な能力評価があり、若手の成長の道筋が見えていました。一方、コンクリート工の中でも建築分野に特化した職種には評価の枠組みが少なく、スキルアップの目標が見えづらいという声もありました。今回の対応は、そうした課題への具体的なアプローチといえるでしょう。
今後の展望:他の職種にも波及なるか
国土交通省は、2026年度までに原則すべての技能者をCCUSの能力評価の対象とする方針を掲げています。今後の検討課題としては、次のような点が挙げられています:
- 製造・加工現場で働く技能者の評価方法
- 複数のスキルを持つ「多能工」への評価基準
- 職種が細分化されている住宅建築分野への対応
今回の団体等検定を活用した事例を皮切りに、他の職種でも同様の取り組みが広がる可能性があります。国土交通省も、さまざまな業界団体に対して、同様の仕組みづくりを促していく考えです。
まとめ
今回のニュースは、建設業界で働く技能者にとって大きな一歩です。CCUSの能力評価の対象が広がることで、正当にスキルが認められ、キャリアアップにつながる可能性が高まります。特に若手や建築分野で働く技能者にとっては、今後の成長の道が見える重要な取り組みといえるでしょう。
今後も建設業界では、技能者の地位向上と人材確保に向けた制度づくりが進んでいくと考えられます。こうした動きを注視しながら、自身のキャリアプランに活かしていくことが求められそうです。