近年、建設業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が加速しています。そんな中、建設業向けにDX支援を行う企業「Arent(アレント)」が実施した調査から、アジャイル開発に関する興味深い実態が明らかになりました。
アジャイル開発とは?建設業との関係
まず「アジャイル開発」とは、もともとソフトウェア業界で広く使われている開発手法の一つです。特徴は、「短期間の開発サイクル」を何度も繰り返す点にあります。
たとえば、家を建てるときに、完成まで一気に全体をつくるのではなく、まずは玄関、次にキッチン、次に浴室…というように、段階的に完成を目指すようなイメージです。そして、その都度お客様の意見を取り入れながら修正を加え、より良いものに仕上げていきます。
このように柔軟性が高いため、経験や勘に頼ることが多い建設業界においても、職人の“暗黙知”をうまく取り込んでいける開発手法として注目されています。
実態調査の結果:認知は進むが、導入はまだこれから
調査は2024年7月〜12月にかけて、Arentが開催したセミナーや展示会に来場した建設関係者を対象に行われ、299件の有効回答が得られました。
調査結果の概要は以下の通りです。
- 「アジャイル開発という言葉を知っている」と答えた人:49.6%
- 「知らない」と答えた人:50.4%
つまり、知名度としてはまだ半々という状況です。
しかし注目すべきは、実際にアジャイル開発を導入しているかどうかという点。
- 「業務全体に取り入れている」企業:わずか1.9%
- 「一部で取り入れている」企業:28.2%
→ 合わせても30.1%にとどまっています
また、「導入を検討している」は5.8%、「導入していない」は18.1%、さらに「わからない」と答えた人が45.9%と最も多く、現場ではまだ十分に理解されていないことが伺えます。
システム開発の現場ではさらに低調
社内のシステム開発に限って見ると、アジャイル導入率はさらに低下。
- 「全面的に取り入れている」:1.5%
- 「一部取り入れている」:21.8%
- 「わからない」:54.4%
この結果からも分かるように、現場レベルでの導入はこれからの課題といえそうです。
なぜアジャイルが必要なのか?Arentの見解
Arentでは、建設業界にアジャイル開発が必要な理由として、以下のように説明しています。
「建設業では長年の経験や職人の勘など、言語化されていない“暗黙知”が多く存在する。こうした知識をデジタル化し、再現性のある形で活用するには、従来の開発手法では限界がある。アジャイル開発こそが、その解決策となり得る」
たとえば、「現場のベテランが持っているノウハウを、どうやって若手に伝えるか?」といった問題は、多くの企業が抱える共通の悩みでしょう。アジャイル開発を通じて、小さな単位で試しながら開発・改善を行っていくことが、結果として知識の形式化につながるのです。
まとめ:建設業の“これから”を考えるヒントに
今回の調査で分かったことは、アジャイル開発の存在は認知されつつあるものの、実際の導入にはまだ課題が多いという点です。
ただ、建設業が直面している人手不足や技術継承の課題を考えると、アジャイル開発がもたらす柔軟な仕組みや現場フィードバックの活用は、今後ますます重要になると予想されます。
「アジャイル?よくわからない…」と思っていた方も、これを機に一度、自社の業務や開発の進め方について見直してみるのも良いかもしれません。