【建設ニュース】大阪府が建築工事にも「余裕期間制度」を導入|資材確保や人員配置の準備時間を制度化

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着工前の“準備期間”を制度化、無理のない工事体制を整備

大阪府では2024年4月から、建築工事においても「余裕期間制度」を導入しました。これまで土木工事だけに適用していたこの制度を建築分野にも広げることで、資材の確保や人員配置の準備に十分な時間を確保できるようになり、突貫工事を防いで工事の品質向上を目指します

この制度は、公共工事を受注した建設会社が、実際の着工前に余裕をもって準備できるよう「余裕期間」と呼ばれる期間を設定する仕組みです。具体的には、契約が成立した日から工事が始まるまでの間に、おおむね2カ月の準備期間が与えられます。この間は実際に現場での工事はできませんが、資材の手配、自社敷地での下準備、施主(発注者)との打ち合わせなどが可能になります。

建設業界が直面する課題への対応策

近年、建設業界では人手不足や資材の調達遅延が深刻な問題となっています。こうした背景から、工事の開始前にしっかりとした準備期間を設けることが、工事遅延の防止や工事そのものの中止リスクの低減にもつながります。

さらに、2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が本格的に適用されました。これにより、週休2日制の推進が求められる中、限られた労働時間内で質の高い施工を行うためには、着工前の準備を計画的に進めることがより重要となっています

実際の制度運用のポイント

大阪府が採用しているのは「発注者指定方式」と呼ばれる方式です。これは、発注者側があらかじめ「この日から工事を始めてください」と具体的に実工期を定めたうえで、その前に余裕期間を設けるものです。

この準備期間中には次のような特徴があります:

  • 現場での作業はできない(あくまで準備期間)
  • 資材の発注・手配、打ち合わせ等は可能
  • 現場代理人は配置が必要だが、常駐は不要
  • 監理技術者の専任義務も免除される

このように、建設会社にとって負担を減らしながらも、準備を円滑に進められる仕組みが整えられています。

全国でも広がる「余裕期間制度」、導入数も増加中

この「余裕期間制度」は、大阪府だけでなく全国の自治体でも導入が進んでいます。2024年度時点では、以下のように導入が拡大しています:

  • 土木工事部門:全国59団体が導入
  • 建築工事部門:全国45団体が導入

国土交通省も、直轄工事においてはこの制度を原則的に取り入れており、今後さらに全国的な広がりが見込まれます。


まとめ:建設業の「働き方改革」と「品質向上」に貢献

「余裕期間制度」は、建設業界が直面する課題――人手不足・資材調達の遅れ・長時間労働など――を少しでも解消するための現実的かつ効果的な取り組みです。

週休2日や働き方改革を進めながらも、これまで以上に質の高い建設を行うために、こうした制度の普及と定着が今後ますます重要になると考えられます。

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