近年、建設業界でも「脱炭素化」が大きなテーマとなっています。そうした中、国土交通省は2027〜2030年度を目標に、直轄の土木工事で使用する建設機械(建機)やコンクリートを、環境に配慮したものに切り替えていく方針を明らかにしました。
これは、工事の現場で発生するCO₂(二酸化炭素)を大幅に削減することが目的です。建設業に関わる方やこれから業界を目指す方にとっても、重要なニュースとなりそうです。
建機は「低燃費」や「電動型」がスタンダードに
まず注目すべきは、建設機械の電動化や燃費改善に向けた動きです。
たとえば現在、工事現場ではディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベルやブルドーザーなどが活躍しています。しかしこれらは燃料の消費が大きく、CO₂の排出量も多くなりがちです。
国交省は、今後は燃費基準を満たした「認定建機」の使用を原則とし、特に油圧ショベルから普及を進めていく方針を打ち出しました。将来的にはブルドーザーやホイールローダーなど、他の建機にも順次対象を広げていきます。
また、2025年度からは、以下のような新しい試験的工事もスタートします。
- 「GX建機活用推進工事(仮称)」:電動建機を活用したモデル工事
- 「ゼロエミッション促進工事(仮称)」:HVO(植物油を水素処理した燃料)など、次世代燃料を使用する工事
これらは、環境に配慮した建機を実際に導入し、現場での効果や使い勝手を検証する取り組みです。
コンクリートも脱炭素型へシフト
建機に続いて、コンクリートの脱炭素化も重要なテーマです。
一般的なコンクリートはセメントを多く使用しますが、このセメントの製造過程で大量のCO₂が排出されるという課題があります。そこで国交省は、セメントの一部を他の素材に置き換えた「低炭素型コンクリート」の使用を直轄工事で原則化する方針を打ち出しました。
具体的には、
- 2027〜2030年度を目安に、対象地域や用途を指定して段階的に導入
- コストや耐久性などを従来のコンクリートと比較しながら効果検証
- CO₂を吸収・固定化する「吸収型コンクリート」も試行的に導入
といった形で、実際の現場に合った最適な材料を見極めつつ、持続可能な工法を探っていく予定です。
環境対応で評価アップ!加点制度の導入も
環境に配慮した取り組みを広げるために、国交省はインセンティブ制度の導入にも着手します。
たとえば、
- CO₂削減の実績に応じて、工事成績評定で加点
- 入札時の総合評価方式におけるポイント加算も検討
といった仕組みによって、環境対策に取り組む企業が評価されやすくなります。
こうした制度が整えば、企業にとっても「環境にやさしい工事」が経営的なメリットにつながる時代が本格的に到来しそうです。
今後の建設業は「脱炭素」がキーワードに
これまで建設業界では、工事の品質やコスト、安全性が重要視されてきました。しかし今後はそこに「環境性能」も大きな軸として加わることになります。
国交省のこの方針は、今後の建設業における技術開発や材料選定、施工方法にまで影響を与える可能性があります。
建設関係者にとっては、これからの数年が「脱炭素対応の実践」に向けた大きな転換期となるでしょう。環境負荷の少ない資材の調達や、次世代の建機の導入など、早めの情報収集と準備が今後のカギとなりそうです。