八潮市で発生した道路陥没事故とは?
2020年、埼玉県八潮市で道路が突然陥没する事故が発生しました。この事故は、地元住民やドライバーに大きな不安をもたらしました。事故の原因とみられるのは、老朽化した下水道管の破損です。
この問題を受け、国土交通省は有識者を集めた検討会「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」を設置。下水道をはじめとするインフラ管理のあり方を根本から見直す議論を進めています。
国交省の検討会、第2次提言を準備中
検討会では、近く「第2次提言」をまとめる予定です。4月24日に都内で開かれた第5回会合では、提言の骨子案が議論されました。
今回の提言のポイントは、「これからのインフラ管理は“不確実性”を前提に考えるべき」という新しい方針です。つまり、「完璧なインフラなど存在しない」という前提で、事故を未然に防ぐ体制にシフトしようという考え方です。
不確実性を前提にしたインフラマネジメントとは?
これまでは「インフラは作れば安心」という考え方が強かったのですが、検討会ではそれを改め、次のような提案をしています。
- 国民に対して、地下空間のリスクをしっかり伝える
- インフラ管理は、「完璧」ではなく「リスクを最小限にする」ことを目的とする
- 事故を防ぐために、優先順位をつけて点検・補修を行う
例えば、すぐに崩壊する恐れがある箇所を最優先で点検し、影響が小さい箇所は後回しにする、という運用方法です。
点検の方法も変わる!社会的影響を重視した優先順位付け
限られた予算や人員の中で、効率的にインフラを管理するため、以下の基準で点検の優先順位を決めることが提案されています。
- 管路(下水道管など)の傷みやすさ
- その施設が壊れたときに及ぼす社会的影響
- 整備してからの年数(経年劣化の程度)
これにより、例えば「交通量の多い道路の下を通る老朽管は、最優先で点検」するような具体的な優先づけが可能になります。
また、施工方法や構造ごとに、客観的な点検基準や健全性の診断基準を設けることも求めています。さらに、点検データを国が一括管理し、自治体への支援も強化していく方針です。
インフラ構造も「メンテしやすく」変えていく方針
今回の提言では、インフラそのものの設計思想も見直しが提案されています。ポイントは、点検・改修がしやすい構造にすることです。
具体的には、
- 下水道管の「複線化」(予備ルートを設ける)
- 処理区ごとに管を細分化し、異常発生時にも限定的な対応で済むようにする
- ポンプ場に簡易処理施設を設け、水位を一時的に下げる工夫
などが挙げられています。
これにより、例えば一部の管が破損しても全体停止を防ぎ、リスクを分散できる仕組みが作れます。
このような冗長性(リダンダンシー)を確保することで、万一のトラブル時にも迅速に対応できる体制を目指しています。
維持管理者と建設会社の連携体制も重要
また、事故が起きた際に速やかに対応できるよう、下水道の維持管理者と建設会社が日頃から連携体制を築くべきとの提案もなされています。
これにより、緊急時に迅速な対応が可能になり、被害の拡大を防ぐ狙いがあります。
今後のスケジュール
検討委員会は、5月にも次回会合を予定しており、第1次提言で求めた全国特別重点調査の進捗報告も聞き取りながら、第2次提言をさらに深める見込みです。
第2次提言は、2025年春にも国交省に正式に提出される予定です。
まとめ|これからの建設とインフラ管理は「リスク前提」の時代へ
今回の検討会の動きは、単なる下水道問題にとどまらず、これからの建設業界全体に影響を与える重要な変化といえます。
これまで以上にリスクを可視化し、柔軟に対応できるインフラを作ることが、これからの建設に求められています。
建設業界に関わる人にとっても、今回の提言内容はぜひ注目しておきたい話題です。