建設業界の「働き方改革」が進展中|時間外労働の上限規制から1年、週休2日の浸透と今後の課題

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2024年4月で、建設業界における時間外労働の「罰則付き上限規制」が施行されてから1年が経過しました。この制度は、いわゆる“働き方改革”の一環として、長時間労働の是正と労働環境の改善を目的としています。建設業では長年、休日が少なく、労働時間が長いというイメージが根強くありましたが、徐々にその構造が変わりつつあります。

実労働時間が減少、週休2日も広がる傾向に

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によれば、2024年の建設業の月間実労働時間は前年と比べて1.7%減少。中でも残業などの「所定外労働時間」は7.6%も減っています。これは2年連続の減少で、特に所定外労働時間が減っている点からも、「働きすぎ」の見直しが進んでいることが分かります。

また、日本建設業連合会(日建連)が行った調査では、2024年度上期(4〜9月)に週に2日しっかり休む「4週8休(週休2日)」を実現した現場は、全体の61.1%に達しました。これは前年同期より11.7ポイント増加しており、確実に改善が進んでいることを示しています。

土木は好調、建築は民間工事がネックに

しかし、すべてが順調というわけではありません。同じ調査によると、「週休2日」が浸透しているのは主に土木工事で、達成率は73.0%と高い数字。一方で、建築分野では49.3%にとどまり、依然として半数に満たない現場でしか実現できていません。

その背景には、民間発注の建築工事の多さが関係しています。公共工事に比べて、工期が短く設定されることが多いため、土日もしっかり休む体制を整えるのが難しい状況があるのです。

民間発注者への理解と協力が鍵

こうした状況を受けて、国土交通省と建設関連の4団体(日建連、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会)は、民間発注者への働きかけを強めています。たとえば2024年11月には、これらの団体が不動産協会(不動協)に対して「土日閉所運動」への協力を正式に要請しました。

この運動は、建設現場でも週末をしっかり休む文化を根付かせることを目的としたもので、「目指せ!建設現場 土日一斉閉所」というキャッチフレーズで展開されています。2025年度からは、日本空調衛生工事業協会や日本電設工業協会も加わり、6団体が協力して推進する予定です。

公共工事では新たな補正係数も導入予定

公共工事の分野では、すでにいくつかの支援策がスタートしています。たとえば2025年度からは、国が発注する直轄土木工事において、完全週休2日制に対応した「新しい補正係数(労務費や経費の調整)」が適用される予定です。また、建設業の人件費にあたる「公共工事設計労務単価」も、時間外労働の上限規制に対応するための費用を含んだ形で見直されています。

今後の課題と期待

国会でもこのテーマは取り上げられており、3月14日の衆議院国土交通委員会では「公共工事は工期に猶予があるが、民間工事はタイトすぎる」といった声も上がりました。現場の声としては、「もっと余裕のあるスケジュールで発注してもらわないと、週休2日なんて夢のまた夢」という意見も少なくありません。

一方で、建設業界で働く人々の中には「もっと稼ぎたいから働く時間を増やしたい」という声も根強くあります。だからこそ、単に労働時間を減らすだけでなく、給与や報酬などの“処遇改善”とセットで働き方改革を進める必要があるのです。

上限規制が適用されて2年目となる2025年度は、官民ともに本格的な改革の進展が求められる年になりそうです。若い人材の確保・定着のためにも、建設業界全体での継続的な取り組みが鍵を握ります。

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